広島先発の薮田和樹投手(24)がオリックス戦(三次=みよし)で自己最長の8回を投げ3安打無失点で6勝目を挙げた。カーブで緩急をつけ、ツーシームが有効。自己最多となる11三振を奪った。半泣きで降板した2年前の嫌な思い出を塗り替え、チームも交流戦首位タイに浮上した。

 薮田がテンポを上げて腕を振った。7回にT-岡田から空振り三振を奪い、プロ初の2桁奪三振の好投。恐れずゾーンで勝負を続け、8回3安打無失点に封じた。「勝ててよかった。会沢さんのリードのおかげです」と笑った。苦い思い出を振り払った薮田にとって、心地よい夜となった。

 風も吹き、気温も下がる快適な土地。だがルーキーイヤーの15年7月8日DeNA戦で、3回2/3を投げ6安打4失点で降板。4四球を出してプロ初黒星を喫していた。だから「この1週間、早くこの日が来いと思っていた」と待ち遠しかった。オリックスのエース金子に投げ勝つ好投。緒方監督も「忘れもせんよ。半泣きで降板した子がね。成長を頼もしく感じるね」と、こちらも笑顔でたたえた。

 感謝もあった。5月20日にモデルのKarunaと結婚。だが結婚後初勝利となった5月23日ヤクルト戦でのウイニングボールを、鈴木がスタンドに投げてしまった。「渡したかった」と残念がっていると、キャッチした少年が薮田宛に送り返してくれた。自身も旧広島市民球場に通った野球少年。だから「誠也からもらえるなんてどれだけうれしかっただろう」と思いを巡らせた。少年への思いも胸に夫人に手渡し、これからも勝つと誓った。

 交流戦で3戦3勝は「奥さんのおかげです」と真っすぐに愛を伝えた。自己最長の8回を投げ終えた後も、行く気満々。前回から修正したツーシーム、緩急を交えるカーブが有効で11三振を奪った。「金子さんに勝てたことがよかった。危機感を忘れないように。次は完封を目指してやります」。思いを背負って投げる夜は、心地よかった。チームも交流戦首位タイに浮上。三次のファンに、その勇姿を見せつけた。【池本泰尚】

 ◆薮田の今季成績は、結婚前が20試合に登板し2勝1敗、防御率2・86なのに対し、5月20日の結婚後は6試合に登板し4勝0敗、防御率1・80。驚異的な「新婚効果」はどこまで続くか。