ヤクルトのドラフト2位の大下佑馬投手が、プロ7試合目で初勝利をマークした。4-4の6回に2番手で登板。打者3人を無安打無失点で抑えて流れをつくると、その裏に川端の2号3ランで勝ち越しに成功。リードを守りきって、念願のウイニングボールを手にした。

 照れくさそうに、お立ち台へと歩を進めた。本拠地神宮を埋め尽くしたファンの前でマイクを向けられた。「まだよく分からないです」。初々しいヒーローに、ファンの温かい歓声が飛んだ。声援にかき消されないよう、「細かいことは考えず、自分の投球をしようと思いました」と必死に声を張った。

 悔しさが初勝利の下地にあった。中継ぎで3試合結果を出すと、11日の巨人戦でプロ初先発のチャンスをつかんだ。だが、結果は2回1/3で65球、6安打5失点。プロの洗礼を浴びた。「大事に行きすぎました。ちょっとでも浮いたら長打になる。まだまだ意識が足りない」。苦い経験を直視し、戒めとしながら次の機会を待った。

 だからこそ、勝ち運が巡ってきた。この日は「目の前を1人1人、アウトを取っていこうと思った」と、低めにボールを集めることに神経を注いだ。そんな大下の懸命な姿に、小川監督も「低めに投げて打たせるのが持ち味。丁寧に投げていたと思う」と成長を感じ取った。

 大下は広島出身。実家は今も広島市内にある。西日本豪雨災害について聞かれると「自分ごときが言うのはおこがましいですが、そういう中でも野球をやっていることは当たり前じゃないんだと、かみしめてやりたいと思います」と慎重に言葉を選びながら、常に故郷を思っていた。

 この日のウイニングボールは、実家の母親の手に渡る模様だ。「こうやって野球をやらせてもらっているので、しっかりできることをしていって、いい報告をしたい」。KO負けからはい上がり、プロの第1歩をしっかりと刻んだ。