阪神が目の前で広島の優勝マジック点灯を許してしまった。3回に先手を奪われ、直後に反撃。最終9回にも粘りをみせたが、あと1歩勝利に届かなかった。この敗戦で虎の自力優勝の可能性が再び消滅。広島にM32が点灯したが、逆転Vの可能性が消えたわけではない。虎の戦う姿勢に変わりはない。

 優勝マジックをともしたカープの凱歌(がいか)が響く京セラドーム大阪の一塁側スイングルームで金本監督が険しい表情を崩さなかった。4点ビハインドの9回に2点差まで詰め寄ったが、ロサリオの遊ゴロで万事休す。会見中も「いい? もうないやろ?」と自ら切り出し、マジック点灯の話題に「あ、そう」と話したきり、足早にロッカールームに引き揚げた。会見時間はわずか1分12秒。悔しさがあふれ出ていた。

 19歳の才木が必死に右腕を振ったが、リーグ3連覇を目指す常勝軍団に歯が立たない。1点差に迫った4回は制球を乱して自滅。生命線の速球、変化球ともに制御できず、田中、菊池、丸を3者連続で歩かせ、押し出し四球で追加点を許すと降板。指揮官も「技術不足か…。何だろうね、いいモノを持っているのに」と嘆くしかない。救援陣もボディーブローの失点を重ね、反撃の足かせになった。

 先発才木が落とし穴にはまったのは3回だ。「魔のカウント3-1」になってしまった。1死一塁では丸に速球を容赦なくとらえられて、右中間を破られる先制適時二塁打を許した。打ち気にはやる鈴木にもスライダーを合わされ、左翼に2ランを被弾。3者連続で打者有利のカウント3-1になった。打たれるべくして打たれ、重い3点を背負った。金本監督は「いろいろ原因はあると思うけど、ストライクを欲しいときに取れるくらいにならないとね。警戒しすぎてもいかんし」と評した。

 「飛車」を欠き、打線の迫力不足も否めない。この日は好調のベテラン福留が休養日で先発から外れ、伊藤隼が3番に入った。2点差の4回は2死二、三塁の同点機で打席が巡るが九里の内角フォークに空振り三振。主力不在が浮き彫りになった。14日に2打点のキャプテンは欠場。敗戦に重くのしかかってしまった。

 意地を見せてきた。14日の直接対決も糸井や福留らの奮闘で逆転勝ち。先週に続いてマジック点灯を4度も阻んでいた。この日も瀬戸際の9回に2点を奪取。片岡ヘッド兼打撃コーチも「やることは変わりませんよ」と言った。広島と12・5ゲーム差に広がったが、直接対決は9試合ある。執念の見せどころは、まだ残されている。【酒井俊作】

 ▼広島に優勝マジック32が点灯した。2位以下で唯一自力Vがあった阪神は、残り全勝で92勝50敗1分け、勝率6割4分8厘。広島は残り42試合のうち阪神戦9試合に敗れても、他カードで32勝すれば92勝49敗2分け、勝率6割5分2厘で阪神を上回る。2位以下の5球団に自力Vがなくなり、マジックが出た。現日程での最短Vは9月5日。

 ▼阪神の自力優勝が消え、広島のマジックが点灯した。阪神の自力優勝が復活するには、今日16日の直接対決に勝ち、17日からのヤクルト戦に2連勝または1勝1分で、広島が17日からのDeNA戦に2連敗するのが条件。