ソフトバンクが柳田悠岐外野手(30)のサヨナラ本塁打で2年連続日本一へ王手をかけた。「SMBC日本シリーズ」第5戦は4-4同点の延長10回、柳田がバットを折りながら右翼へソロを放つ離れ業で劇的に決着させた。1点を追う7回には今季1本塁打の伏兵、明石健志内野手(32)が値千金の同点ソロ。ヤフオクドームでの日本シリーズ連勝を12に伸ばし、明日3日からは舞台を広島に移して歓喜の胴上げを目指す。
やはり決めたのはこの男だった。半分が広島ファンの赤で染まるヤフオクドームを歓喜の渦に巻き込んだ。同点の延長10回の先頭打席。柳田は広島守護神、中崎の内角低めの変化球を振り抜いた。
「久々にももクロの怪盗少女が流れたので、めちゃくちゃテンション上がりました。バット折れていたので、新しいバットを補充します。うわー、折れたー、と思ったんですけど、テラスに入ってびっくりしました」
「初心ですね」と、登場曲を突然、以前使っていた大好きなももいろクローバーZの「行くぜっ! 怪盗少女」に替えた打席だった。バットの先を折りながら、ソフトバンクファンの待つ右翼席にぶち込む離れ業。ダイヤモンドを1周すると、歓喜の仲間にもみくちゃだ。「疲れました。絶対みんなも疲れてたでしょ。打てて良かった」。自身の日本シリーズ初本塁打で4時間半に及ぼうかという死闘を締め、豪快に笑った。
コメント同様、ぶっ飛びなプレーをする要因は、日々柔軟に変化する打撃フォームだ。相手投手や自身の状態に合わせ、構え方や足の上げ方を微調整して対応。藤本打撃コーチが「天才」と評するゆえんだ。
この日は第1戦で二ゴロ、三振と抑えられた大瀬良が相手だった。「クイックを使ったり、うまくタイミングを外された」反省を踏まえ、早い段階でトップを作り始動しやすい形を試した。練習では内川のバットを手に取ったこともあった。打撃練習で使ったが「レベル高え。オレのバットは初心者用やもん。内川さんのバットはプロ用。難しい」と舌を巻いた。「うまくなりたい」という探求心が主砲の打棒を支えている。
故郷広島での第2戦を終えた夜は、広島経済大時代の旧友たちと旧交を深め、「ちょっと飲み過ぎましたね」と幸せそうな笑みを浮かべた。「普段はあまり行けない。友達に会えるのが一番ですよ。ぼくも普通の人間ですから」。激戦の合間のささやかな時間が、大きな力になった。
3連勝で王手をかけ、広島へ再び戻る。「あと1つ勝つまで、相当しんどいと思いますけど、束になれば勝てると思う」。故郷に、2年連続日本一の錦を飾る。【山本大地】
▼柳田がサヨナラ本塁打を放った。柳田はシリーズ通算21試合目の出場で、これが初本塁打だった。シリーズのサヨナラ本塁打は16年<5>戦西川(日本ハム)以来16人、17度目。ソフトバンクでは南海時代の64年<4>戦、66年<5>戦ハドリ、14年<4>戦中村晃に次いで3人、4度目になる。4番打者のサヨナラ本塁打は71年<3>戦王(巨人)08年<2>戦ラミレス(巨人)に次いで3人目となり、巨人以外の4番打者では初めてサヨナラ本塁打を記録した。