日刊スポーツでは「帰ってきたセイバーメトリクス」として米国流の新指標を紹介する。

前半戦を首位で折り返したソフトバンク。中心選手の柳田らが離脱も、2位に7ゲーム差をつけて2年ぶりリーグ優勝へ独走中だ。セイバーで攻撃陣の成績を見ると、ジュリスベル・グラシアル内野手(33)の活躍が目立つ。特に「RCAA」という指標で規定打席未満ながらチームトップと、攻撃陣のMVPといえる活躍を見せた。

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グラシアルは62試合の出場で19本塁打、打率3割2分9厘の好成績だ。打者の攻撃力を表す「OPS」は10割を超える。規定打席到達者で10割以上は、両リーグで鈴木(広島)しかいないハイレベルな数値だ。

チームの他の打者と比較しても好成績が際立つ。チーム総得点のうち何点生み出したかを表す「RC」では、松田宣、デスパイネに次ぐチーム3位。ただRCは打席が多いほど得点を生む機会が増えるため、打席の多い選手が有利になってしまう。そこで今回はRCをリーグ平均と比較した「RCAA」を用いたい。これは成績が良いほど数字が大きくなり、平均以下の打撃だとマイナスの値になる。打席数が少なくても平均を大きく上回る成績なら、高い数値が出る指標だ。

この指標でグラシアルはパ・リーグ4位の20・84。これはグラシアルが出場することで、平均的な打者が出る代わりにチームに20・84点多くの得点をもたらしたことを示す。チームでは唯一の20点超えで、規定打席未満で10傑入りは両リーグでグラシアルだけ。チーム1位のRCAA(2位はデスパイネの13・44=リーグ13位)を記録しているグラシアルが、チーム攻撃陣の前半戦MVPと言える。

そんなグラシアルだが、キューバ代表で国際大会に出るため後半戦は一時離脱する。今やチームNO・1の得点を生み出す主軸の欠場は、想像以上に大きな穴となってしまうかもしれない。【多田周平】

◆セイバーメトリクス 米野球学会の略称「SABR(セイバー)」と測定基準を意味するメトリクスを組み合わせた造語で、野球を客観的データで分析し、選手の評価を行ったり戦術を組み立てる試み。メジャーでは浸透しているデータ指標。

▽セ・リーグで前半戦首位の巨人から攻撃陣のMVPを挙げるなら、丸を選出したい。RCでの比較は坂本勇が上だが、RCAAでは打席が少ない分だけ丸に軍配が上がった。ちなみに、FA移籍1年目に最も高いRCAAを記録したのは07年小笠原(日本ハム→巨人)で33・30。後半戦も同じような活躍を続けられれば、小笠原同様に移籍1年目でのシーズンMVPの可能性もあるかもしれない。