ソフトバンク柳田悠岐外野手(31)が驚きの1発でチームを勝利に導いた。1点を追う6回2死一、二塁でほぼ右手1本、ヘルメットを飛ばして逆転14号3ラン。オリックス山本対策で「2番スタメン」のスラッガーがメジャーばりのパワーと技術を披露した。2回には山本から13号2ランを放って今季2度目の1試合2発。負ければ首位陥落のチームを救った。

   ◇   ◇   ◇

ふわりと上がった打球がグングンと伸びていった。柳田は振り切った直後に落ちたヘルメットに見向きもせず、一塁へ走りだした。打球が右中間のテラス席に吸い込まれると、歓声の中、「ノーヘル」で髪をなびかせダイヤモンドを1周した。

驚異の技とパワーだった。5-6の6回2死一、二塁。オリックス斎藤の125キロの外角低めの変化球。泳がされたが、ほぼ右手1本でバットをすくいあげた。体のバランスが崩れる中でも振り切ったためヘルメットが落ちた。それでも本塁打にしてみせた。

打ちたかった。2回に放った中越えの13号2ランなどで一時は5点をリードするも、5回に二塁手川瀬の2失策などもありエース千賀が満塁弾を含め6失点で逆転されていた。「(川瀬)晃(ひかる)が、四球を選んでチャンスをつくってくれたのでなんとかしたいと、それだけです。技術的なことは分からないが、気持ちだけで打ちました。川瀬には『お前は悪くない、千賀が悪いんで』と言いました。明日(12日)からも気持ちよく野球をしてほしかったので」。6回は1死から川瀬が四球を選んでからつかんだチャンス。ミスした選手の奮起を無駄にしたくなかった。

今季4度目の2番で起用された。難敵の山本対策として工藤監督が選んだ打順だった。「投手にとって立ち上がりが一番心配。強打者が1回から打席に入るのは嫌なものなんです」という指揮官の意図を形にした。1回の第1打席で山本から右前打を放ち、3番中村晃の1発につなげた。

史上3位のスピード達成となる監督通算450勝をプレゼントされた工藤監督は「彼じゃないと打てないホームランだった」と声も弾んだ。柳田は今季2度目の1試合2発で西武山川、楽天浅村、ロメロと並んで本塁打トップ。今季7度目の猛打賞で保った首位打者とともに「2冠」のスラッガーは誰も止められない。【浦田由紀夫】