「全力」で乗り切った。楽天涌井秀章投手(34)が12日、西武7回戦(メットライフドーム)で7回途中2失点と好投し、開幕7連勝をつかんだ。最速150キロを計測した力のある直球で西武打線を押し込み、7安打を許しながら要所を締めた。本格化した夏の暑さにも「全力ダッシュ」を調整メニューに組み込むなど、対策は万全。右足をつりかけるアクシデントも早期申告で対処し、大事には至らなかった。

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全力でねじ伏せた。3点リードの4回2死一塁。涌井は西武中村をこの日最速150キロの外角高め直球で空振り三振に仕留めた。「毎年対戦する中で力と力の勝負をしたいバッターの1人。前回はスライダーが多かったが、今回は真っすぐが多くて、空振りがとれたことは手応え」。7月15日の対戦では計3打席で15球中直球は2球。今回も3打席対戦し11球中7球が直球。力自慢の強打者を球威で抑え込んだ。

日頃から全力を出せなければ、勝負どころでベストは尽くせない。7月下旬から調整メニューに「全力ダッシュ」を加えた。100%を出すために、120%の力で走る。「体を使いこなせないと全力で走れない。ピッチングも体を使いこなさないと、いいフォームでは投げられない」。トレーニング、コンディショニングと投球動作をリンクさせ、好調をキープする。

簡単には崩れない。この日は2回以外で毎回安打を許したが、3併殺を奪うなど、理想の打たせて取る投球で傷口は広げない。6回まで5安打も本塁は踏ませず、7月29日ロッテ戦から続く連続イニング無失点を21まで伸ばした。

だが、異変は7回に起きた。1死から森、メヒアに連続ソロを被弾。その後2死一塁で代打山川への4球目スライダーを投げた直後、右足をつりかけた。捕手からのボールを受けた後、少し間を置いたが、ベンチへ合図。駆け寄った伊藤投手チーフコーチ、トレーナーとともにマウンドを降りた。ただ、大事には至らず。「右足がつりそうだったので、あのまま投げてもいい球を投げられないなと。若い時ならあのまま投げてましたけど、つる前に打たれる前にやめておこうと思って、自分から言いました。今は問題ないです」と自ら説明した。

三木監督も「チームに迷惑をかけないようにできるというのはいい判断。7回のどこで交代しようかと思っていたところなので、いろんな判断にたけている投手だと感心しました」と胸をなで下ろした。常にベスト、最善を尽くす右腕の存在が首位を走るチームに欠かせない。【桑原幹久】