苦労続きの「下妻物語」から「逆転V物語」が加速する。高卒8年目の楽天下妻貴寛捕手(26)が、プロ初本塁打となる先制決勝ソロを放った。2回にロッテ岩下の初球直球を左翼席へ運んだ。18年に右肩のけがから育成契約、昨季は独立リーグへの派遣も経験。試合前時点で打率0割台だった「8番」打者が、値千金の通算3安打目でチームを今季初の5連勝に導いた。2位ロッテとは2・5、首位ソフトバンクまで4・5ゲーム差に迫った。

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“ライパチ”。「8番ライト」の略で“下手な人”への不名誉な代名詞。ちなみに記者は小学時代、主に7番捕手。「やけにチャンスで回ってくるな」と思った記憶がある。

「“下位打線”と言うのが当たり前だけど、あんまり僕は言うのが好きじゃない」。楽天三木監督は球界の先入観に疑問を持つ。「7、8、9番にも1、2、3、4番と違った役割がある。打力が弱い人がいるというイメージになってほしくない」。フル出場すれば、何番でも1試合に3度は打席が回る。指揮官は「勝てるチームは7、8、9番の能力、高い技術を持った選手がいるとすごく戦いづらくなる」と選手の特徴を引き出す打順づくりに日々、頭を悩ます。

3連勝を決めた今回のロッテ3連戦で、7~9番は計9度出塁し7得点。注目は、初戦で3発、2戦目に決勝弾を放った浅村を始めとした上位打線に集まる。それでも、前日23日に12球団最速でチーム400得点に到達した強力打線を下支えする“下位打線”の存在感が光る。だからこそ「8番捕手」の一撃はいっそう価値が増す。下妻は試合前時点で打率0割台。まさか…の1発はロッテに相当なダメージを与えたに違いない。【桑原幹久】