元巨人の三菱パワー・加治前竜一外野手(35)が今季で現役を引退したことが10日、分かった。「体の動きが違ってきました。万全の状態で勝負できない」と、プロ7年、社会人6年の現役生活に別れを告げた。今後は社業に専念するが「サラリーマン1本でどれだけできるか、ワクワクしてます。ただ、野球で生きてきた人間ですから、いつかまた野球に携われたらと思います」と、将来的な現場復帰の希望も口にした。

ファンの記憶に残るプロ野球人生だった。智弁学園、東海大から、07年大学・社会人ドラフト4巡目で入団。1年目の08年6月のロッテ戦で、史上初となるプロ初打席サヨナラ本塁打を放った。学生時代から続ける丸刈りでも愛された。

14年限りで巨人を戦力外となったが「まだまだ野球を続けたい」と、トライアウトを受けた。NPBからのオファーはなかったが、手を抜かないプレーを見てくれたのが、三菱重工長崎だった。東京を離れることになるが、妻恵美さん(40)は「あなたの好きなようにしてください」と背中を押してくれた。

元プロ野球選手。周囲の期待は高かった。「結果を出して当然と思われて、しんどかった部分もありました。プロと違い、トーナメントの社会人は、その大会、その試合にピークを持っていかないといけない。でも、そんな重圧の中でプレーできたのは、いい経験でした」と糧にした。チームの統合に伴い、17年に三菱日立パワーシステムズ(現三菱パワー)に移籍。その年の都市対抗では、主軸として4強入りに貢献した。18、19年は、打撃コーチ兼任で若手の指導にもあたった。

13年間の現役生活の思い出を問われ「プロでは、お客さんがいっぱい入った東京ドームでプレーできました。都市対抗で、もう1回。違うシチュエーションで、2回も満員の東京ドームでプレーできました」と答えた。

引退を決め、思ったことがある。「ボロボロになってやめるイメージをしてたんですが、僕は体が強い。親に感謝ですね。勝負の場にケガで出られなかったということがなかったのは、誇れると思います。そういう意味では、やり切った気持ちです」と控えめに胸を張った。

恵美さんには「支えてくれて、ありがとうございました」と伝えた。「お疲れさまでした」と返された。「これからは家族孝行します」。野球を始めた小3の長男との時間も増えそうだ。

◆加治前竜一(かじまえ・りゅういち)1985年(昭60)4月6日生まれ。奈良県出身。智弁学園では1年夏、2年夏に甲子園出場。東海大では首都大学リーグでMVP2度、3年秋に首位打者と本塁打王の2冠、ベストナイン5度獲得。07年8月の北京プレ五輪で日本代表入り。同年大学・社会人ドラフト4巡目で巨人入団。巨人では実働6年で、109試合、25安打、2本塁打、10打点、通算打率2割1分。15年から三菱重工長崎、17年から三菱日立パワーシステムズ(現三菱パワー)。173センチ、85キロ。右投げ右打ち。