広島中村恭平投手(31)が先発復帰にチャレンジする。14日、マツダスタジアムで自主トレを行い、明らかにした。19年に中継ぎとしてブレークしたが、昨季は故障離脱の影響で登板機会を減らした。昨季途中から先発再挑戦への意欲があり、すでに佐々岡監督に直訴している。先発登板が実現すれば3年ぶり。プロ11年目を迎える中堅左腕は、開幕ローテーション争いに割って入る決意だ。

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中村恭の心はチャレンジ精神で燃えていた。本拠地の室内練習場で、菊池保と入念にキャッチボールを行い、ノックや約50メートルの距離のダッシュを繰り返すなど、精力的に動いた。3年ぶりの先発挑戦への強い覚悟のもと、地道に段階を踏んで調整を行う。左腕は「長いイニングを投げたかった。挑戦できるならできるだけ早く」との思いから、昨年12月中に佐々岡監督に直訴した。「やりたいなら」と挑戦の承諾を得た。

決して容易ではない道を選んだ。18年まで主に先発として1軍戦24試合に登板も、2勝止まり。本格的に中継ぎに転向した19年には、150キロ台中盤の直球を武器に43試合に登板し、12ホールドとブレークした。昨季は2月の春季キャンプ中に故障で離脱した影響で、登板数は14試合に減少。しかし要所で好投し、防御率0・96と安定感を示した。「一昨年は良くて、去年も悪いなりに抑えられた時もあった。(経験を)先発に生かしていけるんじゃないかと」とリベンジへ闘志を燃やした。

先発として球種の幅を広げるべく、昨季は投げなかったカーブ、チェンジアップの習得を目指す。これまで主に直球とスライダーで勝負してきた。「去年はフォークが落ちなかったので、次はチェンジアップ。(カーブは)緩急をつけるために使っていけたら。まずは腕を振って、打者に『この球種もあるんだ』と認識してもらえれば」と説明した。キャッチボールの段階で新球種の手応えを確かめ、試行錯誤を続けている。

激しい開幕ローテーション争いを勝ち抜くために、他の先発投手よりも一層のアピールが必要だ。「他の先発よりも、頭1個抜けたくらいの良さをみせていかないとプラスにはならない。真っすぐとか、自分の得意なところでしっかりアピールしていきたい」。目の前の目標について「とりあえずキャンプを完走したい」と意気込む。31歳の男が新境地を求め、いばらの道を突き進む。【古財稜明】