元阪神打撃コーチ、元近鉄監督の佐々木恭介氏(71=大和高田クラブ監督)が16日、佐藤輝の驚異の打撃を分析した。自身が72年にマークしたオープン戦の新人最多5本塁打に肩を並べたスラッガーのたぐいまれな対応力に着目。近大時代から佐藤輝を知るバットマンが、正三塁手としての成長を熱望した。【取材=堀まどか】

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阪神佐藤君のことを、プロ入り前からずっと気にして見続けてきた。その選手がオープン戦5号…。自分の新人時代を思い出して、感慨深い。

大和高田クラブを率いて近大と練習試合をしたとき。グラウンドに入ったとたん、三塁を守る大型選手が目に飛び込んできた。近大の田中監督に「4年生?」と聞いたら「まだ3年ですよ」と教えられ、驚いた。攻守のスケール感は、最上級生のレベルだった。4年生になり「ドラフトの目玉」になったと聞いて、彼なら、と納得していた。

今の打撃は、当時のレベルをはるかに超えて成長している。近大時代は右の腰の開きが少し早く、左方向に打球を飛ばしたときはこすり気味になっていた。それが今は、左方向に見事に打ち返している。「流す」「おっつける」のではなく「左に引っ張る」という表現がぴったりの打撃だ。春季キャンプを視察した阪神掛布雅之レジェンドテラーが「キャンプの初日と2日目で、全く違う」と対応力に目を見張っていたが、すごく頭がいいのだと思う。

佐藤君の逆方向への打撃を見て思い出したのは、清原和博選手だ。芸術と言われた清原選手の右方向への打撃も、まさに「引っ張る」ものだった。佐藤君にも、その技術が見てとれる。

あとは開幕後に増えるであろう内角攻めをどう克服するか。佐藤君の腕の使い方の巧みさからすれば、ぼくは克服すると予想する。

阪神にはぜひ、三塁で使い続けてほしい。彼は観客を呼べる選手。正三塁手として、阪神の看板に育ててほしい。一塁・大山、三塁・佐藤輝。末永く、夢のふくらむ布陣になると思う。