大記録は止まっても、大きな1歩を踏み出した。8年ぶりに楽天へ復帰した田中将大投手(32)が今季初登板に臨み、日本ハム中田に先制2ランを浴びるなど2本の本塁打に泣き、5回4安打3失点。黒星を喫し、12年から続いた国内シーズンでの連勝記録は28で止まった。右ヒラメ筋損傷で3週間遅れで自身、ファンともに待望の“開幕”。収穫と課題を糧に、次回登板の24日西武戦(楽天生命パーク)で今季初勝利&NPB通算100勝を狙う。

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快音に、数秒後の未来を察した。田中将が首をかしげ、右手を腰に置き、打球を目で追った。1回2死一塁。カウント1-2から1度首を振り、中田の内角を選択。だが外角へ浮いた。球場表示でこの日最速154キロを左中間席へ運ばれ痛い先制2ラン。1点を返してもらった直後の2回には、先頭石井に右翼席へソロを許した。「さあいけるぞ、いくぞという時に先頭でバーンと打たれてしまったので、すごくやっぱりもったいない失点の仕方でした」。流れを左右した2発に、悔いが残った。

懸命に勝機を探った。「全然良くなかった。制球の面で全然コントロールできてなかった」と直球の精度に課題を残した。力を入れ、150キロ前後の球が浮き上がるシーンが目立った。前回登板の3月20日巨人とのオープン戦と比べ、ストライク率は65・7%(35球中23球)から50%(22球中11)に。全球で占める割合も39・3%(89球中35球)から29・3%(75球中22球)と減少した。

それでも、スライダー、スプリットを操り、カウント球から決め球まで活用。「シーズンに入れば勝った、負けたが一番重要。どういう形であれ、抑えることが大事」と3回以降は二塁を踏ませず、1安打に封じ、援護を待った。

チームの力に-。早期復帰へ最善を尽くした。当初予定の3月27日日本ハム戦を登板2日前にふくらはぎの違和感で回避。右ヒラメ筋損傷と診断され、試合復帰に3週間を見込まれた。2軍戦を経ずに10日ソフトバンク戦での即1軍復帰を狙い、3日に100球前後を投げ込んだ。ただ、シーズンを戦い抜くために、周囲の意見も踏まえて総合的に判断。万全を期し、この日に“開幕”を迎えた。10日にも3日と同じく、実戦を想定し休憩を挟みながら97球。打者相手への投球はぶっつけとなったが「そんなに(影響は)なかったですね」と受け止めた。

12年8月19日西武戦以来、自身3163日ぶりの黒星。12年から9年がかりの大記録は止まった。だが、周囲の期待、ざわつきをよそに「ものすごい間も空いていたので、そこに関しては特にピンと来ないのが正直なところ」と意に介さない。「ゲームで投げられたとか、自分にとって前に進んでいくための事実はありますけど、勝たないといけないゲーム。そこに関しては残念。今日の登板踏まえてどう調整してマウンドに上がるか。準備が一番大事」。18番を背負う責任をかみしめながら、ひらけた未来へ目を向けた。【桑原幹久】

○…8年ぶりに楽天に復帰した田中将の今季初登板を待ちわびたファンも熱気を帯びていた。都内在住の佐藤楓子さん(21)は「すごく何日も前から楽しみにしていました」と笑みを浮かべ、10年前から楽天ファンの佐々木大優さん(26)は「8年ぶりに日本に帰ってきて初めての登板なので期待しています」と声を弾ませた。佐々木さんは、13年に球団創設初の日本一を決めた瞬間はテレビで観戦。「(田中将は)ケガなく1年間を通して投げる姿を見たい。多くの試合を投げて多くの白星を積み上げてほしい」と活躍を願った。

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