主将の、4番の感情があふれ出した。痛烈なゴロが二遊間を抜ける。逆転サヨナラを確信した瞬間、阪神大山悠輔内野手(26)は右拳を夜空に突き上げた。

四方八方から仲間のウオーターシャワーを浴びる。両拳を握り、また「よっしゃー」と叫ぶ。「いや、もう…気持ち良かったです」。言葉が続かないほどの喜びで全身が満たされた。

9回裏。3点差を追いつき、なおも2死一、三塁。19年に1度サヨナラ打を浴びせている三嶋と対した。「ベンチの選手も含めて全員で点を取った。そういう場面で回ってきた。打つしかない。いい意味で割り切れた」。

4打席目までは凡退。「悔しい気持ちはありました。モヤモヤした気分はありました」。初球、外角低めスライダーに思いをぶつけて5連打を決めた。「なんとか最後、大事なところで打てて良かった」。ホッと胸をなで下ろした。

虎の4番。プロ1年目に経験してからもう4年近くがたつが、いまだに慣れない。「本当に厳しいモノなので。1試合1試合で反応が変わってしまう世界。気持ちをコントロールするところが難しい」。それでも逃げるつもりはない。

「やりがい、活躍した時の達成感はすごくある場所。それをもっと味わえるようにやっていきたい」。仲間の分まで重責を背負う。それが大山の4番道だ。

4番に戻って3戦目。前日11日まで2位巨人に2連敗していた。もちろん、責任は痛感していた。お立ち台では熱く訴えた。「今ここに僕が立っていますけど、チーム一丸となって勝ち取った勝利だと思います」。主将の偽らざる本心に甲子園は沸いた。

誰1人諦めず、最後は苦しみ続けた4番が決着をつけた。2位巨人とのゲーム差は2に広がった。そんな目に見える数字以上に重みのある1勝だ。

「体力的にも精神的にも9連戦で厳しい部分があるけど、チーム一丸でやっていけば乗り越えられる」。前半戦も残り2試合。堂々と、虎のスタイルを貫く。【佐井陽介】

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