無欲の一振りだった。ヤクルト塩見泰隆外野手(28)は、1回先頭で打席に入った。「大瀬良さんはすごく良いピッチャーなので、追い込まれる前に積極的にという気持ちでした」と、初球の高め148キロ直球を鋭くスイング。バックスクリーン左へと運んだ。今季10号の先制ソロは、6月8日のロッテ戦(ZOZOマリン)に続くプロ2本目の先頭打者弾。自身初の2ケタ本塁打に到達した。

己の仕事に徹する。開幕当初は6番での起用が多かったが、5月から1番に定着した。いかにチャンスを作って、山田、村上らが控える中軸に託せるか。出塁が求められる。「本当はドカーンとホームランとか打ちたい」とポツリと本音をもらすが、欲求を捨て、コンパクトなスイングを心がけてきた。

ただ、それでも貪欲さは失わない。後半戦ここまで50打数11安打の打率2割2分と不振にあえいでいた。この日、志願の早出練習。バットを振り込み、もがいた。その直後での結果。吹っ切れたかのように3回には遊撃内野安打を放ち、19個目の盗塁も決めた。

信頼してスタメン起用し続けた高津監督も「(今季)104三振は小言ではなく“大言”です」と、いたずらっぽく笑った。「チームのいろんなところで引っ張っていける選手。魅力はたくさんあるんですよ」。走攻守でチームを支える切り込み隊長が先頭で旗を振り、1・5差で首位巨人を追う。【湯本勝大】

▽ヤクルト村上(3打数2安打2打点の活躍)「とにかく今は優勝すること、それしか見えていない。そのためには上位2チームにしっかり勝たないと、上は見えてこないと思いますし、なんとか食らいついていきたいと思う」