まさに4球団競合の看板にふさわしい鮮烈なデビューだった。西武ドラフト1位の隅田知一郎投手(22)が7回無失点の好投で、プロ初勝利を飾った。打たれた安打は、わずかに1本だけ。二塁すら踏ませない完璧な98球だった。3与四球、5奪三振。最速150キロの速球と変化球を自在に操った。12球団のルーキーで最速となる白星を勝ち取った。

【ニッカン式スコア】26日の西武-オリックス戦詳細スコア

本塁どころか、二塁すら踏ませなかった。隅田はオリックス打線を完璧に支配した。万雷の期待の拍手を受けてマウンドに。「アドレナリンが出て興奮」した体は、初回から自己最速タイの150キロを2球計測。あっさり3者凡退で片付けると、勢いは加速した。

7回までわずか1安打。多彩な変化球を高低左右と自在に操り、的を絞らせない。6回2死一塁で4番杉本を迎えたのが最大の“ピンチ”。122キロ低めチェンジアップで空振り三振に切ると、両手をたたき、叫んだ。3四球も打者がまったく反応できない内角の変化球で、わずかに外れただけ。「結果にこだわりたかった」。崩れる気配すらない完璧なデビューだった。

エリートじゃない。とにかく体が小さく、細かった。波佐見高入学時は身長164センチ、体重47キロ。「55キロになるまで禁止」と投球練習すら許されなかった。放課後も体幹など別メニューで「1日7食」の生活。「最初の1カ月ぐらいはずっと吐いていた」。白球よりも、どんぶりと向き合う生活。2カ月で体重を55キロに増やした。華々しくプロの世界に入ったが、才能に恵まれているわけではないとの反骨がある。

その分、考える性が自然と身についた。小さかった男の成長を加速させた。生き残るため、多彩な変化球、投球術は磨かれた。今につながる原点だ。「まだ始まったばかり。勝っていけるように」。この上ない結果と、大きな可能性を示した初登板。ゴールデンルーキーはエースの道を切り開いていく。【上田悠太】

▼ルーキー隅田が初登板初先発で白星。西武で初登板初勝利は19年5月19日オリックス戦の松本航以来9人目(新人では8人目)。開幕カードでは、60年4月10日大毎戦の近藤以来62年ぶり。近藤は救援での白星で、西武の新人が開幕カードで初登板初先発勝利を挙げたのは球団史上初めてだ。ちなみに、現12球団の中では西武とヤクルトの2球団が開幕カードで初登板初先発勝利を挙げた新人が出ていなかった。

▽西武辻監督(隅田について)「それだけ力があるピッチャー。並の新人ではないなと思う。無理をさせないように、彼の体調を考えながら、ローテーションをまっとうしてくれれば」