ロッテ佐藤奨真投手(24)がプロ初勝利を挙げた。緩急と奥行きで勝負するタイプの左腕。好投の裏には佐藤都志也捕手(24)の好リードがあった。

荒天で試合開始が30分、遅れた。初回、マウンドへ向かう佐藤奨に球審が投げた球がすっぽ抜けるほど、湿度も上がっていた。

「ぬれている時に投げるのって、滑ったり抜けたりすると思うので」

得意のスローカーブやチェンジアップは、雨の影響を受けやすい-。そこを見越し、1巡目は内角直球とカットボールを多くし、打者を開かせる作業に徹底。「途中晴れてくれたので、チェンジアップの抜けとカーブのかかりがすごくよくなった」と、2巡目以降は緩い球のサインを増やしていった。

とはいえ初回、4番牧には93キロのカーブから入った。前日、佐々木朗が130キロのカーブを本塁打にされた打者だ。「朗希の場合はこういう(速い横の)カーブで、奨真のはキュッと1回目線が上がるので。カーブでの入りは自分の中で全然(ストライクを)取れるなと。初見というのもありますし、いけるなと思っていたので。そこは大胆に来てくれと話して」。

緩い球はもちろん、当たれば長打のリスクもある。「それを気にしちゃったら、あいつの持ち味なくなっちゃうなと思ったので」。左右の投げ分けと、佐藤奨自身の常日頃口にしている“奥行き”。「そういうのを全部考えていかないと抑えられないなと思ったので」と細心の注意を払いながら、序盤のDeNA打線中軸に向かっていった。

2回には首位打者経験もある5番宮崎が、高めのボール気味のカットボールを不自然な形で空振りした。「普通はそのままキュッと曲がってくるんですけど、あの時だけちょっと浮いたんですよね。宮崎さんもそれをカーブと思ったのかは分からないですけれど」。ただ、佐藤奨の良さを感じた瞬間でもあった。「何がそうさせているのか。カーブの使い方がいいのか。インコースを気にしているのか。その後に生きたなと思います」。

スピード全盛期の球界で、珍しいタイプの軟投派を勝利へ導いた。捕手目線での“奥行き”とは何か。「何て言えばいいんだろう…。前に出すっていうか。打席の中で泳がせる…みたいな。分からないですね、業界用語すぎて」と笑った。熱投するロメロに、個性あふれる佐藤奨。対極の左腕を勝利に導き、捕手としての経験をどんどん積んでいる。【金子真仁】

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