ロッテ茶谷(ちゃたに)健太内野手(24)は振り抜くと、空を見上げた。

「最初はいったかなというのはあったんですけど。かなり風が吹いていたので戻されるかなと」

しかし左翼席へ向かって舞い上がった打球は、マリン名物の海風に押し戻されることなく、不思議とそのまま吸い込まれた。プロ7年目、初の本塁打。

「とにかく必死に、とにかく走者を進めなくちゃいけない場面だったので。その割にはしっかり、コンパクトに芯で捉えられたというのはあります」

2回1死一塁。マウンドにはファームでも何度か対戦した、日本ハム・ポンセ。この日も序盤から強気で内角攻めを貫いてきた。

「けっこうツーシームでやられていたので、それも頭に入れながら。とにかく速いというのは、どの打者も言ってたので」

カウント3-0から整えてきたポンセの勝負球は、やはり内角に。詰まらされず強くインパクトした。

必死だ。「7年間やってきて、今年一番多く打席をもらっている年なので」。20年は多く1軍ベンチに入りながら、昨季は石垣島でのキャンプイン早々に故障でリタイア。首脳陣の期待を裏切った。オフの契約更改で「契約してもらったのが良かったです」と口にするほど、背水だった。

2軍で好調をキープし、6月下旬に1軍に昇格した。送り出してくれた鳥越2軍監督の言葉が今も響く。

「自分のできることをやるだけだ。1軍でも2軍でもやることは変わらないから、しっかり頑張ってこい!」

18年オフにソフトバンクを戦力外になり、育成契約打診を断り、ロッテに育成選手として入団した。16~17年の2年間、ソフトバンクで1軍コーチを務めていた鳥越現ロッテ2軍監督とは接点がある。

「本当に…そうですね。育成で入ってきた年からすごく厳しくやっていただいて。2年前に1軍に帯同した時も、守備のことを丁寧に教えていただいて」

連日のノック。「チャー!」と厳しい声も飛ぶ。帝京三(山梨)時代は主に投手だった。「守備もプロでは最初にサードから始まって、本当にほとんどエラーばっかりでたくさんの人に迷惑かけてきたので」。数をこなし、場数を踏み、少しずつ腕を上げていった。「逆に今は、守備でいろいろな人を助けられるようにと思って。恩返しじゃないですけど、まずは守備で」。

この日は必死の打撃でヒーローになった。大型遊撃手の台頭となれば、チームにとってはこの上なく明るい材料になる。前日11日はファインプレーで助っ人右腕オスナを救った。何か話し掛けられていた。「ありがとうございます、って。日本語で」。まだどこか不慣れなお立ち台に、取材対応。オスナからの言葉を披露した時、いい笑顔になった。【金子真仁】

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