ソフトバンク上林誠知外野手(27)が17日、地獄のロングティーで闘魂を注入された。宮崎春季キャンプ第4クール2日目、藤本博史監督(59)の指令で、1・3キロ前後ある長尺バットで柵越え40発に挑戦。ヘトヘトになりながらもクリアした。昨年5月に右アキレス腱(けん)を断裂したが「飛ぶ準備はできている。あとは解き放つだけ」と完全復活に自信を見せた。18日の紅白戦にも出場予定。逆襲に燃える男が、バットで2年連続開幕1軍を手繰り寄せる。

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午後3時前。重さ870~880グラムのバットでロングティーを続けていた上林に、藤本博史監督(59)が歩み寄った。「これで振れ」。長さ1メートル超、重さ1・3キロ前後の長尺バットだ。「このバットで(柵越え)40本」。指令は突然言い渡された。

「しんどかったです」。重さは通常の2倍弱。なかなか打球が柵を越えない。指揮官も「まだ10本? (隣で打っていた野村)大樹の方が飛んどるやないか」とあおった。上林は徐々に表情を崩す。「くそっ!」「あぁもう!」。顔をゆがめながら40本をクリアした。

狙いは下半身を使ってスイングをするため。球場を訪れていた元監督の秋山幸二氏(60=プロ野球解説者)からも指導を受け「重いと下半身を使わないといけないから、トレーニングと思って振れ」とアドバイスを受けた。昨年5月には右アキレス腱(けん)を断裂。メスも入れた下半身を徹底的に鍛えた。

18日には今キャンプ3度目の紅白戦が予定されている。上林は「気負いすぎず、自分の持っている力をそのまま出せたら」と冷静に意気込んだ。主戦場となる外野は、主砲柳田、FA加入の近藤、侍ジャパン周東、牧原大らライバルがひしめく。「実戦が入れば気持ちも高まってくる。徐々に上げていきたい」。

長尺バットで40発を打った後は、自身のバットでの「5本連続柵越え指令」を出された。その時点で体はフラつき、何度も膝に手を置いた。4連続が成功しても、5本目がなかなか届かない。必死に汗を流す上林に、指揮官は最後までゲキを飛ばした。終わったときには、グラウンドには他に誰も残っていなかった。上林は「どうでもいい選手にはああやって言ってくれない。その期待に応えたい」と感謝した。

完全復活は間近だ。「飛ぶ準備はできている。あとはもう、解き放つだけ」。逆襲の仕込みが整った。【只松憲】

◆上林の苦闘 18年に全試合出場を果たし、自己最多の22本塁打を放ったがその後は苦戦続き。19年は99試合に出場したが、死球による右手甲の骨折などの影響で打率1割9分4厘だった。20年も打率1割台と不振。開幕2軍スタートだった21年は6月に2軍戦で死球を受け、右肩肩甲骨骨折などで39試合の出場にとどまった。昨季は5月に右アキレス腱(けん)断裂の重傷を負い、33試合の出場に終わった。

○…DeNAから新加入の嶺井が、本格的に始まる実戦で投手陣との積極コミュニケーションを図る。キャンプは約半分の日程が経過し「溶け込みやすかったので、野球に集中できている」となじんできた。今後に向けて「チーム状態をしっかり把握しながら、結果を求めて、やってきたことをしっかり出せたら。組んだ投手とはしっかりコミュニケーションを取りながらやっていきたい」と意気込んだ。

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