リリーフ7人の無四球無失点リレーを締めたのは、ルーキー左腕だった。阪神ドラフト6位富田蓮投手(21)が12球団新人最速でプロ初勝利を挙げた。同点で迎えた12回。緊迫の場面で、プロ初登板が巡ってきた。

「まさか自分まで回ってくると思ってなかった。12回になってピッチャーが少なくなって、もう行くしかないっていう状態。あとは楽しもうと思ってマウンドに上がった」

打者2人を打ち取った後、佐野から安打を浴びた。嫌なムードが漂ったが、マウンド上で安藤投手コーチから「できるだけ低めに集めて。あとはお前に任したから」と背中を押された。最後は宮崎を外角直球で見逃し三振。「強気のピッチングを心がけた」。グラブを強くたたき。ほえた。ルーキーの気迫の投球が劇的勝利を呼び込んだ。

大谷翔平に浴びた1発がプロで戦う上での土台になった。3月6日の侍ジャパンとの強化試合で5回に途中登板。大谷に真っ向勝負を挑んだ。カウント3-2から142キロ直球でバットを折ったが、打球はフェンスを越えた。「世界でも名の知れてる選手とやれたのは、今後の自信。いろんな場面があると思いますけど、この試合を思い出して『これ以上はない』と思って投げられたらと思う」。その思いが開幕2戦目に早くも生きた。

球団新人で初登板で勝利を挙げたのは18年の高橋遥人以来。記念球は11回を抑えた加治屋が回収し、手元に渡った。「家族に渡したい」とかみしめた。「ああいった場面は、まだ141試合ある中でたくさん出てくると思う。どういった試合でも自分に任された仕事はしっかりできるように、心がけてやっていきたい」。盤石のリリーフ陣に、度胸満点の左腕が加わった。【波部俊之介】

▼阪神岡田監督(富田の起用に)「これから長いこと野球すんのにいっぱいこんな場面で投げなあかんねんわけやから。やっぱり経験しないと前に進めへん。楽な場面ばかり投げててもな」

<とっておきメモ>

明るく実直な人柄も富田の持ち味だ。ドラフトで入団した7選手で唯一の社会人出身。大卒選手2人、高卒選手が4人で、21歳の富田はその間の世代になる。1月の新人合同自主トレでは、年齢に関係なく積極的に同期に声をかけ、輪をつないでいた。1月18日には戸井の18歳の誕生日にサプライズを計画。「同期は今後もめっちゃ大事な存在になってくると思う。ライバルだけど大事にしたいし祝いたくて」と、自らケーキを手配した。

その人柄に三菱自動車岡崎時代の先輩たちは「人懐っこい性格」「愛されキャラ」と口をそろえる。秋山翔投手(26)は「どんな人にも明るく裏表がない。素直さがあったからこそ、社会人で伸びてプロに行けたと思う」と語る。この日のお立ち台では満員のファンに対して丁寧に頭を下げ、感謝を表す姿が印象的だった。【阪神担当=波部俊之介】

【関連記事】阪神ニュース一覧