西武松井稼頭央監督(47)が監督としての記念すべき1勝目を挙げた。

笑顔がさわやかな監督にある日、1枚の写真を差し出した。球場の小部屋の写真。じっと眺める。

「うーん、どこやろ。東北の上の方かな。うーん、秋田?…いや、ちゃう。あ、盛岡だ」

正解だった。メジャーから日本球界に復帰し、楽天入り。岩手県営野球場にも公式戦で訪れた。同球場で長年、用務員を務めてきた松尾ナツエさん(75)が回想する。

「松井稼頭央さんがね、私たちの休憩部屋に突然来てくれたの。『ねぇ、ここ、女子会やってるの?』って。私たちも『入って、入って』って。人懐こく入ってきてくれて、にぎやかにちょこちょこ話して」

おばあちゃんたちの井戸端会議は、岩手では“お茶っこ”と呼ばれたりする。

松井監督もじっと写真を見ながら、柔らかな顔で当時を懐かしむ。

「あの時は確か、お菓子とかもらいに行ったんちゃうかなぁ。地方球場に行くとね、球場のおばあちゃんとかって親しみやすさがすごくて。自分のおばあちゃんみたいに感じて」

元メジャーリーガーのプライドなど見せず、軽やかに加わった。

キャンプインから2カ月。コーチ陣の仕事を尊重しながらも、選手たちに親身に接してきた。西武で育ち、西武に恩返しする立場に。今も昔も球団への思いは変わらない。

「やっぱり、ライオンズはファミリーですから」

次の時代へ-。岩手県営野球場が53年間の歴史に幕を閉じた2日後、指揮官としての第1歩を飾り、後輩たちの輪に軽やかに飛び込んだ。【金子真仁】

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