広島野村祐輔投手(34)が、何より求めた勝利を手にした。

シュートやカットボールなどを両サイドに投げ分けながら、カーブやチェンジアップで奥行きも使った。多彩な変化球と制球力によって、最速140キロの直球も生きた。6回81球3安打無四球無失点。今季初勝利は、18年6月23日以来の阪神戦勝利となり、首位に2・5ゲーム差と再接近した。

勝ちたい理由があった。西日本豪雨から5年。故郷の岡山・倉敷市も被災した。翌19年には被災地に訪問。同年から昨年まで同地を自主トレの拠点とした。「豪雨のときから気持ちはずっと変わらない。大変な思いをされた方がいらっしゃる。そういう方に、微力ですけど届けられたらなと思っています」。思いも球に乗せ、勝利を届けた。

指揮官の期待にも応えたかった。開幕2軍スタートも、3月11日ヤクルトとのオープン戦に呼ばれた。登板後、新井監督から「お前の力が必要になる時があるから頼んだ」と声をかけられた。その言葉を胸に、若手とともに汗を流しながら準備してきた。今季登板2戦目に託された首位との3連戦で、カード勝ち越しを決めた。

この日は広陵の恩師・中井野球部監督の誕生日でもあった。試合前に連絡し「絶対勝て」と返ってきた。応えないわけにはいかなかった。みんなの期待に応えた右腕に、新井監督も「これぞ、祐輔だという投球だった」と絶賛。白星をつかみ、そして再び自らの地位もつかみ取った。【前原淳】

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