「マイナビオールスター2023」にプロ6年目で初出場した阪神大竹耕太郎投手(28)が、日刊スポーツに独占手記を寄せた。昨オフの現役ドラフトでソフトバンクから新加入した左腕はここまでチーム最多の7勝(1敗)を挙げ、リーグトップの防御率1・48が評価されて監督選抜。試合は全セの6番手で登板し、感謝の1回2安打1失点。球宴では師と仰ぐソフトバンク和田毅投手(42)との“競演”も実現し、夢のような時間となった。

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小さいころからの憧れだったオールスターは、本当に充実した2日間になりました。僕をここまで導いていただいたソフトバンク和田さんと一緒に出られたことが、いまだに現実っぽくない感じというか。42歳で現役でいるということ自体が普通じゃないので。

第1戦の和田さんの投球は、ベンチの最前列から凝視しました。15球すべて直球勝負で3者凡退。すごいとしか言いようがありません。試合後にはテレビでも共演させていただき、本当に夢のような時間でした。

球宴前に和田さんから「楽しむことができればそれがすべて。普段話さない人たちと話すことでいろんな発見がある」と、アドバイスをいただきました。積極的に話すのはあまり得意じゃないし、いけないタイプだけど、もう28歳なんで(笑い)。怖いかなと思っていたDeNAバウアー投手とキャッチボールしました。

1年前の球宴休みは、奥日田温泉(大分)で夜は星を眺めて、朝5時半から露天風呂で日の出を見ていました。まさか(移籍して)阪神で球宴に出ているなんて、1年前には思ってもみませんでした。諦めずに頑張っていれば、そういうこともあるんだなと。どういう境遇でもちゃんと1日1日、やらなきゃいけないと思いますし、それが一番大事だと改めて思いました。

子どものころから、パワプロ(テレビゲームの実況パワフルプロ野球)でもオールスターチームを使っていました。その一員になれて本当に夢のようです。全セの高津監督に選抜していただいたのは、今年ヤクルト戦で2試合抑えている(2戦2勝。防御率0・00)こともあるのかな。ファン投票でも、マークシートに入っていなかったのに、4位で18万以上も入れていただきました。ファンの方には「阪神に来てくれてありがとう」ばかり言われてうれしいですし、そうあり続けたいですね。選手間投票での2位も本当にうれしかったです。実際に打席に立った選手たちの目線で選んでもらったので。

阪神に移籍してからも、投球のことなどで相談に乗ってくれる和田さんとは、自主トレも一緒にさせてもらい、今も多くのことを学ばせてもらっています。もっとマウンドで感情を出せと言ってもらったのも和田さんです。そもそも、野球をやりたいと思わせてくれたプロ野球選手でした。小学2年生の時、熊本から福岡ドーム(現ペイペイドーム)に初めて観戦に行った試合の先発が和田さんでした。和田さんが勝って、ヒーローインタビューを受けて、花火を見て、ドームの屋根が開いて…。こんなところで野球している人がいるんだって思ったのが最初で、めっちゃ覚えています。この前、和田さんと一緒にどの試合か探しました。和田さんがルーキーの03年4月23日の日本ハム戦で6回2失点。本拠地でのデビュー戦で、3勝目を挙げた試合でした。そんな和田さんより、僕が先に引退したくない。負けちゃいけない気持ちになりました。まだまだ(和田さんより)能力は足りないですが、追い越していきたいと、今回改めて思いました。

前半戦は自己最多の7勝を挙げることができました。阪神に来てよかったことはたくさんあります。これから大事な後半戦。ここまで抑えてきた成功体験にしがみつくのではなく、相手としっかりと向き合って対策をしていきたい。ある程度数字も出てきて、ちょっと守りに入る部分が出てきているとも思います。長いイニングを2、3点で抑えようと数字を考えると逃げになってしまう。新しいチームで生き残ろうと必死だった2月、3月の感覚でいこうと思います。(阪神タイガース投手)

◆阪神大竹とソフトバンク和田 ソフトバンクで初めて0勝に終わったプロ4年目のオフ、和田に志願して22年1月の自主トレに初参加した。チームのエース格で早大の大先輩。遠い存在だったが野球人生の危機を感じ、勇気を振り絞った。和田は結果を出そうと迷走していた大竹に、体幹から鍛え直すようにアドバイス。大竹は助言のおかげで球速がアップし、緩急にも幅が出るようになった。今季の大活躍の下地に、師匠和田存在は欠かせなかった。

◆大竹耕太郎(おおたけ・こうたろう)1995年(平7)6月29日生まれ、熊本県出身。済々黌では2年夏と3年春に甲子園出場。早大を経て17年育成ドラフト4位でソフトバンクへ入団し、1年目の18年に支配下に昇格。同年8月1日西武戦で挙げた初登板勝利は、育成出身の新人では初となった。22年オフ、現役ドラフトで阪神に移籍。今季4月8日ヤクルト戦で、早大出身者では阪神初の1軍公式戦登板を果たした。184センチ、87キロ。左投げ左打ち。今季推定年俸2000万円。

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