虎の伏兵が、ここぞの場面で集中力を見せた。代走から出場した阪神小幡竜平内野手(22)が値千金の適時三塁打で試合を決めた。

7回だ。佐藤輝の同点打、坂本の中犠飛で逆転に成功し、なおも2死一、三塁。この試合初打席が回ってきた。カウント1-1から左腕高梨の142キロ直球を左中間へはじき返した。「打った瞬間、抜けてくれると思った」。飛球は前進していた外野陣をあざ笑うかのように芝生を転々。開幕戦以来となる117日ぶりのマルチ打点を記録し、「地響きぐらい揺れていた」と振り返る歓声の中、高く拳を突き上げた。

途中出場での起用が続く中、4日広島戦以来となる打席だった。走攻守で出場の可能性がある立場に「慣れは難しい」。そんな中、投手の代役などでネクスト・バッタースボックスに立つ瞬間は絶好のチャンスなのだという。「そこでもタイミングが取れる。いざ出たときに、しっかりプレーできるように」。積極的に代役を務め、より近い位置から相手投手の球筋を研究。当初は「若手だから」と向かっていた仕事も、今は大切な意味を持つ。

6月3日ロッテ戦(甲子園)でサヨナラ打を記録するなど、得点圏打率は4割1分7厘。「後から行く場面はどこで行っても緊張して当たり前。緊張しながらどれだけ準備できるか」。地道な準備は確実に勝負強さにつながっている。

試合前には2軍戦にも出場し、5打数1安打。岡田監督も「朝早く起きて5打席練習してますから」とフル稼働した末の一打にニヤリだ。今季開幕戦は遊撃スタメン出場。もちろん、現状に甘んじることはない。「やっぱりスタートから出ることが1番。そこでモノにできるように」。研ぎ澄ました集中力で、存在感を高めている。【波部俊之介】