ロッテ小島和哉投手(27)が6回無失点の好投を見せ、5月24日の西武戦以来となる6勝目を挙げた。8試合連続未勝利だったため、81日ぶりにつかんだ白星。小島にとっては結果で喜んでほしい2人の恩人がいた。

試合後、小島が「3、4試合前くらいに1回、監督室に行って話した時に」と口を開いた。1人は開幕投手に抜てきし、期待を寄せてくれている吉井理人監督(58)だ。「いろいろ申し訳ない気持ちが強かったので、話す機会をくださったので、僕から行った」。7月中旬、ZOZOマリンの監督室で1対1で対話したことを明かした。

「『初回からどんどん飛ばしていって、体力尽きたら代えるから。気にせずどんどん行け』と話をしていただいた。初心にかえってじゃないですけれど、1回1回、1人1人の積み重ねだと思うので」。

それまでは5失点、6失点の連続だった。だが、吉井監督の言葉を受け、失点も少なくなった。前回登板の6日楽天戦では7回2失点でも負け投手に。それでも「1回、1日」を積み重ねる気持ちでつかんだ、この日の1勝だった。

投げても勝てず。吉井監督は今季だけでなく、将来的にもロッテを背負う期待の大きさから佐々木朗希投手、種市篤暉投手を含めた3人の評価は、ひときわ厳しい。直接ではなく、報道を通じて伝わる声が、発奮材料の1つでもあった。

「ずっと良くなくて、ここ2、3試合は投げ終わった後のコメントもいつもと違うので。僕はあんまり、なんか…。なんかちょっと気を使われているなって。監督に。僕自身もまったく満足していないので、もっともっと高い目標を持って頑張りたいなと思います」。

この日、初回先頭から2者連続空振り三振でスタートした。だが、4回は1死満塁。5回は無死一、二塁のピンチを背負った。いずれも後続を三振などで封じてゼロを並べた。だが、5回を終えて、99球。自身が課題としていたのは、得点圏に走者を置いた時の右打者への対峙(たいじ)だ。前日12日に本塁打を放っている長距離砲の中村に対し、4回には全球変化球で空振り三振。6回にも内角スライダーで2打席連続三振に斬った。

「結果的に抑えられて良かったと思います。同じ失敗をずっと繰り返してきたので、いつもとは違うようには攻められたかなと。久しぶりに勝てたので、ちょっとホッとはしてもすけれど…。でも6回で代わっているようでは話にならないと思うので、反省するところはしっかり反省していきたい」。

小島がふがいなかった中で、先月末に佐々木朗希投手が左脇腹肉離れにより離脱した。種市は好投を続け、オールスターに初選出され、今月11日のオリックス戦ではプロ初の「中5日」で起用され、結果を出した。

「ずっと悪かったので、その間、種市が良い投球をして、僕的にはうれしい半面、悔しい部分もすごいありますし、中5日で投げているのとかも見て、歯がゆい気持ちがあるのは正直なところですけれど、朗希とか種(種市)とか、若い選手はチームを押し上げていかないといけないとい思っているので、僕もしっかり先発の中心になれるように。まだ、(吉井監督に)期待とかはまったくされていないから代えられるとかもあると思うので、何も言わず次の回(この日であれば7回)も投げられるような期待を勝ち取れるように、頑張っていきたいと思っています」。

一方、吉井監督は、この日の投球内容も厳しい評価を並べた。「いやあ、ボール先行でもっとスイスイ投げなきゃいけない。6回まで頑張ってくれましたけれど、まだまだ」。チーム全体の課題を問われても、矛先は小島に向かった。「四球は出ちゃうのしょうがないんですけど。そこをストライク先行していったら、改善できると思うので。今日の小島なんて典型的です。5回で100球近くいくっていうのは、ノックアウトも一緒なので。あんなことしてたら、ローテーションを任せられないです。今日も攻めているつもりだったと思うんですけど、見ているとそうは見えないですよね。厳しすぎる?」。さらに助言も忘れないのが吉井流だ。「勝ちたいという気持ちが強すぎて、良いところを狙い過ぎている感じがするので。良いボールを投げていると思うので、大胆に攻めていってほしいなと。走者が出たらああいうふうになるのはしょうがないんですけど。走者がいない状態からピンチのような感じで投げているので。ちょっと悲壮感漂っているので。もっと張り切って投げてほしいなと思います」。表情は緩やかだった。

もう1人。この白星を捧げたい人がいた。浦和学院(埼玉)2年時からコーチとして指導を受け、7月24日に直腸がんのため45歳で亡くなった三浦貴さんだ。同30日の告別式当日は福岡でソフトバンク戦があったため参列出来ず、生花を供えた。30日に試合後も「本当は今日勝って、喜んでほしかった」と悔しい表情もみせていた。

「三浦さんの最初の担任が僕らの代だった。僕がセンバツで優勝した時に『まだ上には上がいるぞ。プロの世界は本当に厳しい』という話をしてくださって、常に上を目指してやっていく姿というか、僕のモチベーションを高くいつも持ち上げてくれた。すごく感謝しているし、すごく残念。タイミングが良ければお通夜とか行きたかったが、ちょうど福岡に行っているタイミングだったので行けなかった。『まだまだだぞ』って言われている気がするので、しっかり結果で喜んでもらえるように頑張りたい」。

吉井監督と浦和学院の三浦コーチ。2人の師に、さらなる飛躍を誓う貴重な白星となった。【鎌田直秀】

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