西武粟津凱士投手(26)は行間に少しばかりの悔しさを込めた。

「今年はプロ5年間の中で、肘のコンディションも良くなりましたし、一番試合にも投げさせていただいた年で、その中でも目に見える結果、防御率も1年通して良かったですし」

しかし背番号112を付ける育成選手の今、ライバルたちと競いながらも、7月末までに声はかからなかった。支配下登録を受けたのはただ1人、豆田泰志投手(20)のみだった。

「良くなっていった豆田も近くで見てましたし、あれくらいずば抜けないといけないのかなというのもあったんですけど、自分としては最後まで諦めずにやりました」

先発も中継ぎも。イースタン・リーグ30試合で登板し、2勝3敗1セーブ、防御率1・95。スリークオーターより少し下の「ロークオーター、という感じです」というフォームから、140キロ台中盤の球威ある直球をどんどん投げ込む。

この日も韓国選抜の中軸からシンカー、直球、スライダーを異なる3球種で三振を奪い、1つ許した四球以外はつけいる隙さえ許さなかった。

山形市出身で、18年ドラフト4位で東日本国際大から西武入り。しかし21年4月に「プロに入ってからずっと良くなかったんで、思い切って心機一転、自分の体とも相談して」と右肘のトミー・ジョン手術を受けた。今季は育成選手としてプレーした。

投げられない期間に肉体を強くした。よりよいフォームを模索した。そして何より「肘が良くなって、痛みがなくなって思い切って腕を振れるので」。最速は150キロに迫る。いよいよ1軍で勝負できる段階に近づいてきた。

オフには戦力外通告を受けたものの、コンディションに問題はなく、実力も上向き。球団側は来春以降の支配下登録を期待し、育成選手として再契約を締結する可能性が高い。

かといって、それが目標というわけでもない。

「自分自身、すごく1軍で活躍したいので。支配下になりたいというより1軍で活躍するために今、野球やってる気持ちが強いので。どこで投げてもしっかり抑えられる、結果を出せる投手に。ファンの皆さんに応援してもらえる投手になりたいです」

来季は同じ変則右腕のリリーバー、森脇亮介投手(31)が戦列を離れる。この意味を全身で感じ取り、勝負をかける。【金子真仁】