泳げミエちゃん! 阪神岡田彰布監督(66)が、ヨハン・ミエセス外野手(28)に“バレンティンになれ”と指令した。1年目の昨季は5本塁打、打率2割2分2厘と爆発ならずも残留が決定。指揮官は手本に13年にNPB最多60本塁打を放った元ヤクルトのバレンティンを挙げ、泳ぐような前さばきでボールを捉える新打法を勧めた。ミエちゃんがバレンティン化すれば、球団史上初のセ・リーグ連覇はもらったも同然よ!?

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岡田監督は遠く離れたミエちゃんのことを思っていた。あのパワーを生かしたい。そのために頭を働かせていた。昨季は60試合で5本塁打、打率2割2分2厘の低空飛行に終わったが、期待も込めて契約を更新。「もうちょっと打ち方変えてええよなあ」と打撃フォーム改造を提案した。「ボールつぶしすぎやからな。もったいない。ほんまの力が伝わってない」と意図を明かし、「あんな振らんでも飛んでいく」と力説した。

完成形も描く。「バレンティンなんか、めちゃくちゃ前で打ってたやろ。引きつけて強いスイングする必要ないんよ、あれだけパワーあったらな」。13年にシーズン日本記録となる60本塁打、NPB通算301本塁打の大砲が理想だ。たぐいまれな怪力があるからこその打法。同じ右の長距離砲タイプのミエセスにも、そのポテンシャルは「兼ね備えてるやろな」と見る。

「バレンティンなんか、ほとんど泳いだホームランばっかや。差し込まれてガーンと打ったホームラン少ない。あれくらい力あると、差し込まれたらみんなドライブかかるからな。ミエちゃんもどっちかいうと、ドライブかかるやろ」

打球にドライブがかかると飛距離も当然、伸びない。バットにボールを乗せるように打つ前さばきで、スタンドインさせるスタイルが理想。特に甲子園では右翼から左翼に吹く浜風に乗せれば楽々、というわけだ。

昨年の春季キャンプ。ヤクルト小川GMが視察に訪れた際、「バレンティンなんか1年目(のキャンプで)外野にも飛ばんかった」と言われたという。指揮官は「でも、あんな化けるんやからのう」と、来日2年目を迎えるミエセスの大化けにも期待は大きい。

オフは母国ドミニカ共和国でトレーニングする助っ人は、足をあまり上げない新打法に着手するなど、精力的に動いている。リーグ優勝時のビールかけでは岡田監督から「ミエちゃん、主役ちゃうで」と指摘された陽気なドミニカン。バレンティンのように本塁打を量産し、グラウンドでも主役を張れば、Vロードがぐっと開ける。【中野椋】

◆バレンティンのNPB時代 11年のヤクルト1年目から2年連続で31本塁打を放ち、連続キングに輝いた。13年にはプロ野球記録となる60本塁打で3年連続タイトルを獲得。当時のNPB最多は、64年王貞治(巨人)とローズ(近鉄)の55本だったが5本も更新した。同年は確実性も身につけ、打率3割3分はセ・リーグ2位。最下位球団からのMVP受賞は史上初だった。手術や故障の影響で出場15試合、1本塁打に終わった15年を除き、ヤクルト在籍9年で30本塁打以上が8度。20~21年のソフトバンク時代も含め、通算301本塁打は外国人史上4位。

 

〈2年目以降に活躍した主な外国人野手〉

◆ブーマー(83~91年阪急・オリックス、92年ダイエー)1年目は17本塁打に終わったが残留。ペース配分を計算した2年目は春先に体力を温存し、37本塁打、130打点、打率3割5分5厘で外国人初の3冠王。日本球界で10年プレーする右の強力助っ人となった。

◆エルドレッド(12~18年広島)1年目11本塁打、2年目13本塁打で解雇危機も、野村謙二郎監督の希望で残留。3年目の14年に37発でキングとなり、監督に恩返しを果たす。16年日本シリーズでは3試合連続本塁打。133本塁打は広島外国人で歴代2位。

◆バルディリス(08~09年阪神、10~13年オリックス、14~15年DeNA)阪神に育成入団。2年間で33安打4本塁打で解雇されたが、10年に阪神時代の指揮官だったオリックス岡田監督に拾われて急成長。三塁守備の評価も高く、15年にDeNAを退団するまで6年連続100試合以上に出場した。

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