少し前の話で恐縮だが、昨年末、阪神大山悠輔と雑談していた時の一コマだ。寒空の甲子園駐車場。ひょんなことからハワイ優勝旅行に話題が移ったので、あの「パイナップル写真」について聞いてみた。

取材を終えた4番がなぜか両手にパイナップルを持ち、海をバックにほほ笑んでいる写真。南国の楽しい空気をおすそ分けしてもらおうと考えただけなのだが、苦笑いされて驚いた。

「実は僕、あの時めちゃくちゃ筋肉痛だったんです。トレーニングで追い込んでからハワイに飛んだので。もう腕はバキバキで上がらないぐらいのタイミングでパイナップルを持ったので、ちょっと大変でした」

いろいろ勝手に心配していた自分がちょっと恥ずかしくなった。

阪神18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一を達成した直後のオフ。主力選手たちは皆、目が回るほど忙しい毎日を送っているように映った。表彰式にイベントに取材…各局のテレビ番組にも引っ張りだこ。練習時間の確保が相当に大変だろうなと想像していたが、そこは自制心を利かせられる猛虎軍団だ。

大山にしても、ハワイで練習量が落ちると見越して、出発前に体をいじめ抜いたのだろう。「パイナップル写真」の舞台裏を知って、なんだかホッとした。

まだ年が明けていない時期から、主砲はすでに未来に向けて準備を本格化させていた。年末にドラフト1位入団時の監督でもある金本知憲氏らと会食した際にも、新たな原動力を手にしたのだという。

「長く続けるための秘訣(ひけつ)じゃないけど、金本さんがやってきたトレーニングの話を聞いて、やっぱりそうだよなと。自分も少しはやっている気でいたけど全然甘かった。自分はまだまだ脂肪も多い」

不動の4番としてチームを頂点に導いたというのに、満足感に浸る期間はとびきり短かったようだ。

日本一になった翌年はモチベーションの上げ方がなかなか難しいのでは? 年末にぶつけた問いかけはあまりに無粋だった。

「そんなことはないです。優勝、日本一チームになったけど、今年は今年で終わり。来年はまた一からという気持ちしかありません。連覇という目標がある。僕自身、最高出塁率のタイトルは取れたけど、数字はまだまだでしたしね」

2月1日のキャンプインが近づいてきた。24年の虎ナインに限れば、練習不足を心配する必要はなさそうだ。【野球デスク=佐井陽介】

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