捕手に嫌がられる打者に-。阪神大山悠輔内野手(29)の歩みを追う日刊スポーツ独自企画が「走姿顕心」とタイトルをリニューアルして今季もスタートする。キャンプ特別版の後編では相手バッテリーとの駆け引きについて独白。「野球が面白くなってきた」と語る理由とは…。【取材・構成=佐井陽介】

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今年は連覇を目指す優勝チームとしての重圧について聞かれることがあります。個人的には重圧を感じる以上に、そういう目標があることはすごく大事だと考えます。連覇という言葉は僕だけではなくチーム全体として、常に言い続けていく必要があると思うので。

昨年は優勝、日本一という目標にみんなのベクトルが向いていた。だからチームが一丸となった試合を続けられた。今年も再びベクトルを持っていくために、連覇を強く意識することが大事だと考えます。連覇がそんな簡単なものではないということは選手が一番分かっています。今年も優勝できるように自分自身、相手に嫌がられる打者になりたいと思っています。

僕は今年でプロ8年目になります。いろいろ経験を積ませてもらって、ある程度は立場もできてきて、いい意味で少しずつ余裕ができてきました。以前はいっぱいいっぱいすぎて1日1日に余裕がありませんでした。必死すぎて、常にしゃかりきになって毎日を過ごしていた気がします。そういった意味で、以前と今では違いがあります。

打席の中でもバリエーションが増えてきました。打ち方もそうですけど、一番変わったのは考え方です。今まではヒットでしか打点をあげられなかった。それが今は犠飛でもいいし、状況によっては内野ゴロでもいいと考えられるようになった。バリエーションが増えたことで、力みもだいぶ減りました。そうやって変化していく中で、これからはさらに投手はもちろん、捕手に嫌がられる打者になりたいと考えています。

「今まで振っていたのに振らんやん」とか「振っていなかったのに今度は振ってくるやん」といった感じで、「何を投げたらいいんだろう」と捕手に考えさせられるようになりたい。そういうことを考え始めて、自分の中で野球が少し変わってきました。昔はただがむしゃらにやっていた感覚でしたが、今は野球が面白くなってきました。たとえばストライクからボールになる変化球を見逃せた時なんかは、本当にすっごく気持ちがいいです(笑い)

僕の場合、相手バッテリーと駆け引きする上で、まずは自分を知るところから始めました。自分はどういう球で打ち取られているのか。捕手は僕に対してどういう球種を投げておけば安全だと考えているのか。そういう部分を一から考え直しました。能見篤史さんがまだタイガースで投げていた時に「オレだったらこう攻める」とアドバイスしてくれたことも思い出しながら、データも勉強して配球について考えています。

あとは「流れ」ですね。野球には流れがある。流れは目に見えないけど、それを敏感に感じ取る能力は本当に大事です。初球を打ってはいけない場面で打ってしまうと、相手に流れが行く。一方で初球から行った方がいいケースもある。まだまだ勉強不足ですけど、そういう流れをより感じ取れるようになれば、もっと楽になると考えています。

駆け引きで言えば、去年1年間の傾向を今年は逆に生かせるところもあるかもしれない。そこはまた読み合いで、楽しい部分でもあります。「これが正解」というモノはないけど、もっともっとレベルアップしていくつもりです。(阪神タイガース内野手)

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