体の中心部にあったグラブを右ほおまで近づけ、左足を胸元に付くまで高く上げる独特な投球フォーム。ライアンが帰ってきた。右肘の違和感のため、開幕22試合で今季初登板を迎えたヤクルト小川泰弘投手(33)が、24年の1勝目を挙げた。「復帰してすぐチームも勝ちましたし、自身にも勝ちがついていいスタートを切れた」。

打席でもライアンだった。7回にセーフティースクイズ。投球さながら、頭部まで高く構えたバントで追加点。「バントで流れを切らないというのは投手の大事な仕事」。5点リードの4回に森下に1発を浴び「細かい精度はまだですけど、今ある力で」と7回5安打2失点無四球に収めた。

ライアンは、ライアンを探していた。開幕投手の筆頭候補も、患部の痛みを発症し、3月8日の阪神とのオープン戦(甲子園)を回避。そこから続いた2軍暮らしの日々。YouTubeを開く時間が増えた。検索ワードに打ち込んだのは「小川泰弘」。昨季、22年…。過去の投球フォームの動画をあさった。故障の影響で本来のライアンを見失っていた。

元祖も見た。自身の投球のモデル、伝説の速球王ノーラン・ライアンの投球動画も見返し、同氏の著書も読み返した。試行錯誤し、23年の小川泰弘が今に合っていると気付いた。「何とか成長した姿で1軍に戻りたい、1日でも早くマウンドに戻れるようにと思ってやっていました」と自身の投球動画は、お気に入り登録。いつでも見返せるようにした。

そうしてたどり着いた“開幕”。自身が、みんなが求めていたヤクルトのライアン小川が戻ってきた。【栗田尚樹】

▽ヤクルト高津監督(小川について)「もうちょっとバタバタするかと思ったんですけど、さすがのマイペースぶりでね、良く投げてくれたと思います。もう少しスピードが欲しいかなと思ったんですけど、丁寧にいろいろな変化球をコースに投げ分けられた」