監督として初のキャンプは笑いではなく、一喝で幕を開けた。DeNAの春季キャンプが1日、沖縄・宜野湾でスタート。中畑清監督(58)は、練習開始前の円陣で、あいさつに反応しないナインに雷を落とした。守護神として期待する山口俊投手(24)には、「練習で手を抜くな」と厳しく接する。その効果もあり、初日の練習は活気にあふれた。ユニホーム姿も初披露。もちろん、持ち味の笑いもちりばめながら、精力的に動き回った。

 笑顔が消え、グラウンドに張りのある声が響き渡った。「おはようございますってあいさつしたら、全員が反応しようや。反応が鈍い。反応がないのは嫌。反応してつながっていくのが大事。意識してくれな!」。背番号70のユニホーム姿を初披露し、いよいよ始まった春季キャンプ。その練習前の円陣で、あいさつへの返答が小さいことが許せなかった。しかし、このゲキに「ハイ!」と応えたのは高木ヘッドコーチだけ。思わずよろけたが、この監督はくじけない。あらためて、「反応し合うことを強く思ってくれ!」と声を張り上げた。

 チームを引き締めるため、意図的に雷を落としたわけではない。監督が最も重視するコミュニケーション。その欠如に、とっさに言葉が口をついた。「全く考えてなかったよ。現実を見た方が直しやすい。こういうのは時間をかけちゃダメ。その場で反省させないと」。直後の反応は鈍かったが、厳しさをいきなり示し、雰囲気は一変。その後のウオーミングアップから、練習終了まで、グラウンドには威勢のいい声が響き渡った。

 気になったことは、迷うことなく指摘した。ブルペン投球を終えた山口を呼び止めると、2分近く厳しい表情で説教。アップでのメリハリのない動きを戒めた。「投げる前の練習が手抜きが多い。それをなくせば抑えの失敗がなくなるぞ、と伝えたよ。球はよかったからね」。守護神として期待をかけるからこそ、準備段階から、真摯(しんし)に取り組む姿勢が欲しかった。

 活気ある雰囲気に、自然と監督のテンションも上がった。全体練習後の特守では、三塁を守る筒香へ熱視線。「いいねえ、かっこいいよ。後でサインして」と絶賛。自らバットを握ることはなかったが、約40分間、期待の若手を見守り続けた。ファンへは「いいプレーをしたら拍手してもらえますか。お願いします!」とキヨシ節全開で応援を求めた。筒香も「ああやって盛り上げてもらえると、つらいときでも頑張ろうという気持ちになれます」と感謝した。

 初めて袖を通したユニホーム姿で感じたのは、一体感だった。「みんな同じユニホームでね。当たり前だけど、一緒に戦うメンバーなんだと、力強く感じたね」。テレビカメラ15台、178人の大報道陣を集めた初日の採点は120点。監督として迎えた初キャンプで、手応えありのスタートを切った。【佐竹実】