アントニオ猪木参院議員(76)が25日、都内で日本人で初めてムエタイラジャダムナン、ルンピニースタジアム2冠王者となった吉成名高(18)から報告を受けた。

吉成は17年10月に猪木氏主催の格闘技イベント「INOKI ISM2」に出場した縁があった。猪木氏は吉成を激励しつつ、現在のスポーツ界や社会について持論を繰り広げた。

-吉成選手の報告を聞いてどんな気持ちか

みんな頑張っているので、素晴らしい。スポーツを通じて世界平和というテーマでやってきて、本当に思うようにいかないのが人生だと思うけど、五輪を控えて、その中で私が89年に出た(参議院選挙で初当選)時に、ある先生が『お前、スポーツと平和は別なんだよ』と言われましたけど、今は逆に言えば、政治がスポーツを利用している。逆にいえば、メッセージはスポーツを通じたほうが伝わりやすいというのもある。年号が変わる区切りのいい時に、新しい時代に向けて、やってきたことを大きく花ひらかせてください。

-現在、さまざまな格闘技が盛り上がっている。どう感じているか

戦後、師匠の力道山から始まり、プロレスに関しては中身が変わってきている。今はネットを通じて世界中に一瞬にして配信される。逆に言えば、今の時代はうらやましいな。我々は、そこに行かないと理解してもらえない。だからいろんな国、アフリカ、ドバイ、いろんなところに行きました。そういう意味では時代に乗っかって、発信して頑張ってほしい

(吉成が「スポーツだけでなく、私生活でもチャンピオンとしての自覚をもって精進していきたい」と話す)

はみだせないのは、つまんないねぇ。ちょっとはみだしたら、すぐ…。俺なんか生まれ持ったじゃないけど、子どもの時からはみ出してますから。

-今の子をかわいそうに思うか

かわいそうというより、人間らしさがだんだんなくなってしまう。確かにワイドショーの影響も強いし、優等生みたいなのばっかり。そうでないと世の中は生きていけない。優等生の基準がなんなのか、これも分からないですね。そういう中では、言いたいことを言うと、政治家の場合は特に言葉を選ばないといけない。たたいちゃいけない、いじめはいけない。いけないに決まっているけど、昨日まで一方通行だったのが、逆に標識が変わって、こっちに来たら違反ですよ、となったり。あんまり人にたたかれないで、人にメッセージを送れるのはスポーツが一番。

-(吉成からの質問)大学に行かず格闘技1本でやっていて不安がある。どうしたらいいですか。

大学は俺も行ってないから分からない。義務教育を終えてないからね。途中でブラジルに行って、そのまま向こうでスカウトされて、デビューしたから。国会議員でも田中角栄さんは義務教育は受けているでしょう。もとから非常識なんで。今は高齢化社会が大きな問題。その中で自分自身が体ぼろぼろだからね。年の数より、体に負った傷の方が多いぐらい。首から、腰から、肩から…。そういう自分との戦い。人のために何をするか。政治家であれば、国のために自分自身をどうケアしていくか。そういう年に来てしまった。学校出る、出ないは、自分の心を持っていれば別にどうってことない。体験に勝るものなし。

窮屈な時代の中で思いきってはみ出せ、と強烈なエールを送り、固い握手をかわした。