豪栄道(29=境川)が、照ノ富士(24)との大関対決を制して2敗を守った。立ち合いから一気に寄り切り、優勝争いをリードする横綱白鵬(31)との1差を死守した。昨年11月、元京阪電鉄社長で後援会長を務めていた佐藤茂雄氏が死去(享年74)。恩返しの逆転初優勝へ、残り2日間も全力を尽くす。

 会心の相撲だった。白鵬に完敗した前日から一転、豪栄道が完勝で優勝争いに食らいついた。立ち合いで照ノ富士の喉元に向かって右手を伸ばすと、そのままもろ差しに。上体が浮いた相手を一気に寄り切った。「いつも大きい声援をもらっているので。昨日は負けたけど、今日は期待に応えられて良かった」。豪栄道コールで背中を押してくれた地元ファンに感謝した。

 喜ばせたい恩人が、天国にもいる。北の湖前理事長が急逝した昨年11月20日、時を同じく亡くなった佐藤後援会長だ。元京阪電鉄社長で大阪商工会議所会頭も務めた同氏は、地元財界の「顔」だった。三役時代から関係者を通じて何度も後援会長就任を依頼していたが、その度に「大関になったらやったる。頑張れ」と固辞された。「じゃあ、なったる」と心に誓い、豪栄道は現在の地位に上り詰めた。

 関西の財界でのしあがった佐藤氏には常々「勝負は、勝たなあかん」と言われ続けた。「勝つ、じゃなく喝や」と気合も入れられた。2度目のかど番だった昨年九州場所前には「ケガを治して、大関で帰ってこい」と励まされた。それが、最後の会話だった。

 初優勝を楽しみにしていた恩人のためにも、最後まで全力を尽くす。今日14日目は、同郷の勢とのご当所対決。「集中して何でも思い切ってやるだけ。(相手は)調子いいから気を引き締めていく」。熱い思いを胸に秘め、残り2日も戦い抜く。【木村有三】