横綱鶴竜(32=井筒)が16年九州場所以来4度目の優勝に王手をかけた。2敗で追う平幕の魁聖を直接対決で下し、12勝1敗。

 「(前まわしを)取られるのが嫌だったんじゃないかな。うまく反応できましたね」。194センチ、205キロの巨体を折り曲げ、低く当たってきた相手に、より低く頭で当たり、一瞬ではたき込んだ。

 過去11戦全勝。合口抜群の相手と3度目の優勝を飾った16年九州場所以来の対戦。さまざまな相手との取り口を書き留めてあるノートで勝利の方程式を確認し、きっちり退けた。

 前日の12日目は、栃ノ心に今場所初黒星を喫した。先場所は11日目の初黒星で左足首にダメージを負い、4連敗につながったが、今回は朝稽古もきっちりこなすなど問題なし。「気持ちを切り替えられた」と、ショックを引きずることもなかった。

 残り2日でリードは2差。14日目に3敗の勢、高安、魁聖の3人が負けても優勝は決まるが、そんな他力は必要ない。結びの一番で豪栄道を下せば4度目の賜杯を手にできる。「明日決めてやろう、という気持ちか?」と問われ「そういうことを考えると良くない。平常心で臨みます」。数々のけがを、引退の危機を乗り越え、横綱鶴竜が歓喜の瞬間に手をかけた。