先場所の尊富士に続き、今場所は大の里一色の場所でした。
大の里以外の役力士で頑張ってついてきた力士はいない、と言っても過言ではないでしょう。何とか両大関が千秋楽まで優勝の可能性を残したといっても、大の里の負けを待つ他力本願です。厳しい言い方ですが責任を果たしたとは言えないでしょう。何とか最低ラインの12勝で優勝した大の里は立派。一方でまだ、ちょんまげを結ったばかりの力士に優勝をさらわれた悔しさを、他の力士はかみしめてほしい。
新入幕から3場所連続11勝以上で、全て優勝争いに加わったことで、大の里の実力は既に実証済みです。私が注目したいのは、次の名古屋場所で優勝でもしたら、どうなるんだろうということ。もちろん大関とりのことです。通例では三役で3場所通算33勝が目安になっていますが、2場所連続優勝ともなれば、これは横綱昇進の条件に値することになります。これは規格外のことですから、前例を踏襲する必要はないと思います。過去の前例にはこだわらず、臨機応変に対応してもいいでしょう。そもそも大関や横綱昇進に明確な決まりはなく、その時々に合わせてきたのだから、協会には柔軟な対応に期待しています。
さらに横綱昇進についても私見があります。大の里が仮に名古屋で2場所連続優勝して、大関に上がったとしましょう。通例では新大関の秋、九州と2場所連続で横綱昇進です。そうなると4場所連続優勝で頂点に立つことになりますが、横綱昇進の条件を2回もクリアしたことになります。果たして、その必要があるのでしょうか。そこは内々でいいし、多少はあやふやでもいいから考えておくべきだと思います。一般の会社でもそうです。常に先、先のことを想定するのが組織だと思います。話が飛躍しすぎたかもしれませんが異例中の異例のことに慌てずどう対応するか。備えは大事です。
今場所の状況から提言したいこともあります。上位陣に多かったから余計に目立ちましたが、休場者の多さは気になりました。格闘技だから仕方ないけど、全体的に稽古量の不足が一因にあると思います。私もいろいろな親方衆と話をしますが、よくよく考えると43部屋は多すぎるような気がします。入門者が減る現状で少人数の部屋だと、稽古時間が短い、稽古相手が少ないとなれば、稽古不足も自然の流れでしょう。親方株は現状維持でいいとして部屋数はある程度、抑えた方がいいと思います。
協会を離れた身だからこそ、相撲界の気になることは他にもあります。新たな公傷制度を考えてもいいのではとか、入門者が減るばかりだから外国人枠を広げてもいいんじゃないか、とか。場所前にチケット完売で、連日の満員御礼と夏場所は盛況でした。でも今が良ければいいんじゃない。将来のことを考えなければいけないと思います。協会を去っていろいろ経験しているからこその私見を、これからも投げかけたいと思っています。
(日刊スポーツ評論家)

