もうすぐ終わる「平成」の歌舞伎界。

故中村勘三郎さんが始めた「コクーン歌舞伎」「平成中村座」、8月の歌舞伎座で恒例の「納涼歌舞伎」をはじめ、市川海老蔵の「六本木歌舞伎」、片岡愛之助の「システィーナ歌舞伎」など、歌舞伎公演も多様化し、5月にまた1つ新しい形式の「オフシアター歌舞伎」がスタートする。勘三郎さんの薫陶を受け、16年から初音ミクと共演する「超歌舞伎」を行う中村獅童(46)が中心になって上演するもので、先日の取材会で熱く「オフシアター歌舞伎」への思いを話した。

上演されるのは「女殺油地獄」で、会場は天王洲の倉庫、そして新宿・歌舞伎町のライブハウス。「20代でニューヨークに行った時、海外では倉庫での上演や、さまざまなスタイルの演劇があることを知った。その時からいつか倉庫で歌舞伎をやりたかったし、混沌(こんとん)とした歌舞伎町でやるのも面白いと思った。『女殺油地獄』も06年に初めて演じて、またやりたいと思っていた。ダークな題材でありながら、普遍性がある作品。僕がやらなくちゃいけないのは、古典の精神を守りながら新しいものを追求すること、獅童ならではの作品を作りたい」。

獅童は父親が幼い時に歌舞伎俳優を廃業したため、後ろ盾がない中で歌舞伎界に入った。いい役に恵まれなかったが、勘三郎さんに抜てきされて「人気歌舞伎俳優」の道が開けた。「僕は大名跡を継ぐ予定もないですから、話題作りをこういうところでしていかないと」と自虐的に話した。

劇場に入るまでの導線にマッピングを使用した仕掛けの導入も考えている。「トイレが1つしかないなど、劇場ではない場所を使うことによる制約もあるけれど、逆にそれだからこそできる会場づくりや見え方を工夫したい」。母親に小さい時から、唐十郎の紅テント、大衆演劇、ストリップに連れていってもらった。「アングラへのあこがれが僕の中にある。自分が若い頃から触れてきた映画や歌舞伎以外の演劇、ファッション、ロックなどすべての要素が歌舞伎にある。今回は歌舞伎や演劇好きの方はもちろん、ファッションなどが好きな若い方にも見てほしい」。

演出は小劇場の赤堀雅秋氏で、仲のいい荒川良々も共演する。荒川とは02年公開の映画「ピンポン」で共演したが、それ以前の無名時代に、ある舞台のオーディションで初めて出会った。獅童は落ちたが、その舞台を見に行くと、荒川が出演していたという。「『ピンポン』で出会ってから、一緒に舞台がやりたいと常々思っていた。念願がかなって共演できてうれしいけれど、今度は負けてたまるかという気持ちで舞台に臨みたい」。無名時代のリベンジを誓っていた。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)