真打ちに昇進する柳亭小痴楽
真打ちに昇進する柳亭小痴楽

柳亭小痴楽(30)が9月下席から真打ちに昇進する。落語芸術協会所属の二つ目で作るユニット「成金」のリーダー的存在。同協会としては、桂米福以来15年ぶりに単独で真打ちに昇進する期待の落語家だ。

真打ち昇進会見には師匠の柳亭楽輔、春風亭昇太会長、春風亭柳橋副会長のほか、小痴楽の父5代目柳亭痴楽と仲の良かった三遊亭小遊三、桂米助も同席。昇太は「協会としても期待している」と言えば、小遊三は「おいっ子は真打ちになるという感じ。父親の前座時代はかわいかったけれど、せがれの方が貫禄が出てきた。将来、痴楽襲名で本領を発揮してほしい」と後押しした。

小痴楽は15歳までは落語に一切触れなかったが、中学3年の時にたまたま家でCDデッキから聞こえてきた落語(8代目春風亭柳枝の『花色木綿』)に魅了され、「これをやりたい」と思うようになったという。最初は桂平治(現桂文治)に入門したが、いいかげんな性格から何度もしくじり、父の門下に移り、父の死後は父の弟弟子の楽輔門下に入った。

小痴楽は「粗相が激しい人間で、師匠に拾ってもらった。昇進で、6代目痴楽襲名という話もあったけれど、息子というだけで、痴楽という名をいただくのはおかしい。将来、痴楽にふさわしいという時にいただければ」と話した後、同席した小遊三、米助らの姿を見て、「(襲名を)言ってくれる師匠たちが生きているうちに、なるべく早く襲名したい」と笑わせた。

昇太によると、5代目痴楽は「後輩の面倒見が良くて、みんなが痴楽師匠が好きだった」という。また、今回の単独昇進の理由については「評判が良かったし、地方でも1000人の会場を埋めるなど、お客さんも多かった」と実力を高く評価。さらに7月に舞台共演した橋本マナミが「落語を聞いていて、よく小痴楽さんを聞いている」と話していたことに触れ、嫉妬と同時に小痴楽の人気を実感したという。

「成金」は昇進披露興行が始まる21日の前日(20日)に、最後の公演を行い、解散する。「将来、11人のメンバー全員が真打ちになり、どこかの落語会で出演した真打ち全員が成金メンバーだったというのが目標」と話した。披露興行では上方から桂文枝、桂文珍らが交互出演するほか、「成金」メンバーも出演する。「1人真打ちが夢だった。トリでは自信のある20、30の演目を用意しています。落語をうまくなりたいんじゃなく、面白くなりたいし、初めて聞く人の入口になればいい。僕をきっかけに落語に触れてほしい」。披露興行は新宿末広亭、浅草演芸ホール、池袋演芸場、国立演芸場と続く。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)

真打ちに昇進する柳亭小痴楽(前列右)と師匠柳亭楽輔。後列左から春風亭柳橋、春風亭昇太、三遊亭小遊三、桂米助
真打ちに昇進する柳亭小痴楽(前列右)と師匠柳亭楽輔。後列左から春風亭柳橋、春風亭昇太、三遊亭小遊三、桂米助