白人至上主義のKKKに黒人刑事が潜入捜査を行う。70年代半ばの信じられないような実話がベースだ。

黒人刑事ロンは強心臓で弁が立つ。新聞広告にあったKKKの番号に、白人のふりをして電話したことをきっかけに幹部の心をつかむ。代わって面会に出向き、潜入捜査を引き受けるのが白人刑事フリップで、珍妙な二人三脚が人種差別のえぐい実態をあぶり出す。

ロンの印象的なセリフがある。「シャフトとスーパーフライ、どっちが好き?」。当時の映画「黒いジャガー」と「スーパーフライ」それぞれの主人公の名前だ。カッコイイ黒人がダサイ白人を倒す黒人向け娯楽作品で、優劣は漫画的に強調されていた。スパイク・リー監督は今作を意図的にこのタッチに重ねていて、差別主義者の白人は誰もが笑ってしまうほど間抜けで、黒人は「常識人」だ。

「グリーンブック」のような良心的な作品にもどこかに白人優位の視点があるのではないか、隠れた偏見を問いかけるあえての極論だろう。ロン役のジョン・デビッドはリー監督の代表作「マルコムX」のデンゼル・ワシントンの子息。一貫した姿勢はいつも問題の原点に目を向けさせる。【相原斎】

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