岡山県倉敷市出身の平松恵美子監督が、コロナ禍で楽しみにしていた行事を奪われた子どもたちのために、サプライズ花火を打ち上げた同市の有志が幼なじみだったことに着想を受け脚本から作り上げた。俳優デビューを果たしたプロフィギュアスケーター高橋大輔をはじめ前野朋哉、MEGUMIら同市や県出身の俳優もオファーを快諾した。

高校生の難波蒼は、ほのかな思いを抱く幼なじみ白神紅子の自閉スペクトラム症の兄が、木の上で騒ぐ中、降ろそうとして「打ち上げ花火を見せる」と約束するが、紅子から「その場限りのウソ」と涙ながらに怒られ、倉敷市内での打ち上げ実現に奔走する。美術館の学芸員・古城緑郎に相談すると100人分の署名が条件と言われ、商店組合の集会でのプレゼンでも高校生には厳しい現実に直面する。

友人、家族、地域…さまざまな枠組みの中で人が交わり、ぶつかり合う中で、さらに事件が起こる。有志が作った“ご当地映画”ながら、家族を描き続けてきた松竹映画の香りも、ほのかに漂う。平松監督は「男はつらいよ」シリーズで知られる、山田洋次監督の作品の多くで助監督、共同脚本を務めてきた。そのDNAは映画の中に流れる。

20歳の山時聡真が、涙ながらに大人に協力を訴える蒼を演じた場面は見どころだ。ダブル主演の18歳・中島瑠菜も母が家を出て酒浸りの父と兄を支える紅子のけなげさを全身で表現した。みずみずしい2人を経験がある俳優陣が支え“ご当地映画”のひと言でくくってはいけない深みがある。【村上幸将】

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