女優芦田愛菜(16)が、ますます成長している。公開中の映画「星の子」(大森立嗣監督)では、同年代の思春期ならではの繊細な心の揺れを見事に表現。役者、司会、CMと、芸能活動と高校生活を両立させながら、大人への階段を確実に上っている。

★いつもON!

一生懸命。現在高1の芦田愛菜には、“一所懸命”と表現するのがピッタリなのかもしれない。芸能仕事と高校生活を両立させながら、日々大好きな読書にもいそしむ。

「オンとオフがあるというよりは、いつも『オン』なんです! 学校に行く時はみんなで楽しく過ごしますし、お仕事をさせていただく時はその現場で一生懸命やらせていただいています。どちらも自分の人生なので、あまり『切り替えなきゃ!』という気持ちにはならないんです」

「円卓 こっこ、ひと夏のイマジン」(14年)以来、6年ぶりの実写主演作となった「星の子」では、娘を思うがあまり“あやしい宗教”を深く信仰する両親(永瀬正敏、原田知世)のもと、過酷な青春に翻弄(ほんろう)される、中3・ちひろ役を演じた。

「家では親の宗教のことや、周りからどう見られているか悩む大人なちひろがいるけれど、学校に行けば心を許せる友達がいるという、ちひろの多面的な部分や、心の揺れを表現できたらと思っていました」

原作を読み込んで、撮影には役作りのため髪の毛を約30センチ以上切って臨んだ。

「髪を乾かすのも洗うのも楽ですし、だいぶ慣れました。ロングヘアの時が長かったので、またちょっと違う自分を楽しんでます」

昨年10月からは、テレビ朝日系「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」で、日本テレビ系「メレンゲの気持ち」(11~12年)以来、バラエティー番組のMCも務めている。「毎回博士ちゃんたちが、自分の好きなことにすごく一生懸命に熱意を持って話してくれるので勉強になりますし、すごく刺激を受けます。サンドウィッチマンのおふたりも優しく接してくださり、掛け合いも楽しくて、素で笑ってます! メレンゲの時も純粋にゲストの方のトークを楽しんでました。今も素で楽しんでいるので、そんなに変わってないのかもしれないですね(笑い)」

18年にはNHK連続テレビ小説「まんぷく」で“語り”も担当した。

「朝ドラは、視聴者の方たちと同じように主人公たちを優しく見守るような存在として聞いてもらえればと思っていました」

何事も一生懸命に取り組み、そして楽しむ。

「イベントとか行事も『せっかくやるなら全力で!』というタイプなので、そこは性格なのかもしれないです(笑い)。本当にたくさんのことを経験させていただいて、どのお仕事も楽しくやらせてもらってます。その時その時で自分がやれることを最大限にやりたいと心がけています」

★家で待つのは

3歳の頃に、母から「楽しそうだからやってみる?」と勧められ、事務所のオーディションを受けた。

「鮮明な記憶ではないんですけど、お芝居のレッスンが楽しかったのは覚えています。その楽しさで、ずっと続けている感じです」

6歳で出演した日本テレビ系「Mother」で難役をこなす演技が注目され、“天才子役”として一気にブレークした。演じても良し、歌って踊っても良し。愛くるしい笑顔が全国に広がった。優等生なイメージもあるが、当の本人は「『Mother』の現場では、監督や助監督さんに『お芝居なんだからちゃんとしなさい』って、よく怒られてましたよ」と笑顔で振り返る。

さまざまな作品に出演し、演じる楽しさもどんどん増していったという。

「一番楽しいのは、相手の方といいキャッチボールができた時というか、表情がマッチしたり、お互いを引き立て合うような息があった時です。例えば合唱だったら、きれいにハモれた時に、聞いている方も歌っている方も気持ちいいみたいな…。そういう感覚に似ているんだと思います」

演技とともに、幼少期から読書好きで、自らを“活字中毒”と称する。多忙な中、読書する時間があるのか? と勝手な心配もしてしまう。

「まとまった時間でなくても、出掛ける前の10分とか、意外と本を読む時間はたくさんあります。私にとってはすごくリラックスできるというか、お風呂に入ったりするのと同じくらいの感覚なので、『わざわざ時間をつくらなきゃ』とも思ってないんです」

最近はさらに、リラックスタイムが増えた。念願だった猫を飼い始めたのだ。

「スコティッシュフォールドの『こはる』ちゃんです! 毎日家で待ってくれていると思うと、どんなことでも頑張れちゃいます! 読書している時に本をかじったりするので、本当は許せないんですけど、かわいいから許せちゃいます…。今の生きる糧といってもいいくらい、私の生活の中心です!!」

まだ16歳。ますます成長していく姿から、目が離せなくなりそうだ。

★腹筋割れたら

「目標は『芦田愛菜が演じている○○』ではなくて、『その作品の中の○○』というか、演じる役に心を引かれたとか、共感したとか、この子好きだなと思ってもらえるような…。なかなか難しいんですけど、私自身を忘れられるような演技ができたらいいなと思います。やってみたいのは、二重人格の役とか興味があります。青春ものもやってみたい。海辺で夕日に向かって叫んでみたいです」

もちろん10代も存分に満喫するつもりだ。

「友達とたわいのない話をしたり、ふざけ合うような時間を大切にしたいです。旅行するのも楽しそうですし、ベネチアとか、海外にも行ってみたいです」

理想の女性像は「腹筋が割れている女性」という。

「憧れますし、かっこいいなと思います! 最近は寝る前にストレッチをしたり、ズンバというダンスを踊ったりしています。運動してからじゃないと寝られないくらい、はまって頑張ってるんですよ!」

常に全力な愛菜ちゃんが、どんな「愛菜さん」になるのか楽しみだ。【大友陽平】

▼映画「星の子」で母役を演じた原田知世(52)

芦田愛菜さんとは今回が初共演でしたが、小さな頃からテレビで活躍されるお姿を拝見していましたので、以前からとても親しみを感じていました。16歳になった愛菜さんは聡明(そうめい)な女の子に成長され、撮影中は役と向き合いながらひたむきに芝居に取り組む姿が印象的でした。同時に、ふとした表情の中に幼い頃のかわいらしい愛菜さんが見え隠れすることもあって、一緒にお芝居をしていると、自然といとおしさが湧いてくる場面が何度もありました。

◆芦田愛菜(あしだ・まな)

2004年(平16)6月23日、兵庫県生まれ。09年に女優デビューし、10年、日本テレビ系ドラマ「Mother」でブレーク。11年、連ドラ初主演のフジテレビ系「マルモのおきて」主題歌「マル・マル・モリ・モリ!」で、NHK紅白歌合戦に史上最年少で出場。同年のNHK大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」ほかドラマ、映画、CM出演多数。昨年7月、著書「まなの本棚」発売。同11月、天皇陛下の即位を祝う「国民祭典」祝賀式典で祝辞を述べた。現在テレビ朝日系「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」(土曜午後6時56分)でMC。血液型A。

◆映画「星の子」

芥川賞作家・今村夏子氏原作。芦田は見どころについて「親子3人で星を眺めるシーンが好きです。両親は何を思って見上げているんだろうと思うだけで、ウルウルしてきますし、ぜひ見ていただきたいです」。大森立嗣監督。公開中。

(2020年10月11日本紙掲載)