宝塚 ~ 朗らかに

宝塚の底力信じて 元星組トップのメッセージ/稔幸

星組新トップ礼真琴、花組新トップ柚香光に続く同期が各組で主要な位置にいる95期「黄金世代」だが、かつて同期4人でトップを張ったのが71期。花組愛華みれ、月組真琴つばさ、雪組轟悠と同時期に星組トップだった稔幸に、当時の思い出を聞いた。自身の近況とともに、戦後初の長期休止を乗り越えようとする後輩への思いも語ってもらった。【取材・村上久美子】

近況報告とともに、古巣へ、後輩への思いも語った稔幸(本人提供)
近況報告とともに、古巣へ、後輩への思いも語った稔幸(本人提供)

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劇団の「顔」トップスターを同期でそろい務めた。

稔幸 正直、ただただうれしかった。宝塚をよく知らずに受験し、初舞台を終えても、宝塚にいる自分に疑問を抱いていました。舞台に立つことは好きだけれど、何か足りない気が…。

組配属後は、組が違えば同期と会う機会も少ない。

稔 ある時、スターを目指して苦悩し、努力をしている同期生の姿を目の当たりに。その意識の高さにとても刺激を受けました。

各組の中心へ近づくうち、4人で「いつか…」と、励まし合っていたという。

稔 同期生がいたから私もトップになれた。(同時期就任は)奇跡に近い。4人は、今もほぼ毎日連絡を取り合っています。

95期を見て思うのは-。

稔 今の生徒さんはすごい。バーチャルが進化した時代に、生身で勝負している。同期生が各組で「キレッキレッ」に活躍できている状態は、最高にキツイけれど、最高に楽しい時期なのでは。ファンの皆様も一喜一憂。そこが宝塚のおもしろさかも。トップとして舞台に立てる喜びは、どんな責務にも押しつぶされることはない! 個性を生かして自由に輝いてほしい。

3月以降、出演予定の舞台は相次いで中止に。中学卒業を控えた息子がおり、横浜港報道を見ながら、不穏な流れを感じていた。

稔 春休みの家族旅行を早々にあきらめました。舞台も、不安でも見たいファンの皆様の思いに、「開催しない」ことで、その心情を解放してさしあげる責任がある、と。残念ではありますが仕方がない。人と人が空間で共鳴し合ってこそ成り立つ「密」の世界。ただ、芸術、文化、エンタメが衰退しない策を真剣に考えなければと思います。

自粛期間中は「日常を仕切り直した」と言う。

稔 宅配サービスが滞らなかったことに感謝。生活リズムが崩れないように、食事、トレーニングの時間を決め、あとは思いつくまま。私は絵を描くのですが、いたずら書きでも気持ちが浄化される気がします。

古巣の宝塚歌劇は長期休止とともに、過去に例のない上演日程見直しも。

稔 苦渋のご決断だったと思います。(見直しは)ひそかに願っており、ご英断。ほっとしました。宝塚はお披露目、退団のビッグイベントが日程に組み込まれている。重要なポイント。大変でしょうが、得策と信じ乗り切ってほしい。

星組公演も中断した。

稔 胸が苦しくなります。専科の華形ひかるさんの退団、万里柚美さんの組長としての締めくくりでもありました。(先送りは)つらくても、不幸中の幸いと思ってほしい。体のメンテナンスもできます。心待ちにしてくださっているお客様のため、最高の幕開きへ-底力を信じています。

上演予定の見直しで、退団者の日程も変更に。

稔 千秋楽までの日々は、特別な時間。(期日未定は)ラストスパートが続くので、とてもしんどいのではないでしょうか。でも「きちんと退団する」ことは大切。次へのステップのためにも、ここは我慢です。

仕切り直しも、前向きにとらえれば…。

稔 次への1歩を仕切り直す大変さははかりしれません。けれど外の世界も足踏み状態ですから。急がず、焦らず。「予定より長くいられて良かった」と。退団して数年たつと、宝塚の良さを再認識します。人生長い…OG人生は永遠に続きますから(笑い)。

自身は阪神・淡路大震災での上演中止を経験。95年1月17日は、「歌劇」執筆のため、早起きしていた。

稔 寝室に行きベッドに倒れた本棚と粉々に飛び散ったガラスを見て、普段通り寝ていたら…とゾッとしたことを覚えています。

稽古再開後は大阪市内のホテルに泊まり、場所は学校の体育館を借りた。

稔 舞台に立つ意味を深く考えました。復興しきれていない中での再開は妥当か。仲間とも、先生方とも何度となく語り合いました。1日も早く再び幕を開けようと強い意志を示してくださった劇団の姿勢に、私たちは役割を信じ、力を合わせて立ち上がることができたと思います。

状況は違えど今、後輩も先行き不透明な中にいる。

稔 当たり前にしがみつかず、背伸びし過ぎず、できることから楽しみ、やりがいを広げていってもらえれば。そして、再開が決まれば「再開できる幸せ」を十分に味わってください。

☆稔幸(みのる・こう)6月16日、東京都生まれ。清泉女学院高を経て、85年入団。星組配属。貴公子然としたたたずまい、端正な二枚目男役として注目。98年星組トップ就任。01年「ベルサイユのばら」で退団。愛華みれ、真琴つばさ、轟悠と、71期で5組中4組トップを同時期に務めた。現在はアーティストとしてイラストレーション、絵本製作、ボディーワークの指導も。身長168センチ。

夢の舞台を創り続けて100年あまり。時代とともにスターを生み、話題作を手掛けてきた宝塚歌劇団。華やかなステージを作り続ける裏側で日々、厳しいけいこと競争の中で切磋琢磨を続けている夕カラジェンヌの横顔を伝えます。

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