梅ちゃんねる

医療モノ対決、山Pも月9も見応えあり/春ドラマ評

4月期の春ドラマが出そろった。日本テレビ、TBS、フジテレビの3局でかぶった医療モノ対決がなかなかの見ごたえ。吉高由里子の働き方改革ドラマや、2クールで放送する「あなたの番です」なども話題だ。「勝手にドラマ評」38弾。今回も単なるドラマおたくの立場から、勝手な好みであれこれ言い、★をつけてみた(シリーズもの、深夜枠は除く)。

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フジテレビ月9ドラマ「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」
フジテレビ月9ドラマ「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」

◆「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」(フジテレビ、月曜9時)窪田正孝/本田翼/広瀬アリス

★★★★☆

医師の身分を隠し、放射線技師として幼少期の恩人・杏ちゃん(本田翼)の下で働く天才役を、窪田正孝がいい抜け感で演じる。世界的名声より杏ちゃんが大事なマンガ脳と、ONになった時の切れ味のギャップはさすが。医師サイドが無能ばかりのテンプレだが、主人公のスゴ腕と、やる時はやるチームの個性、医師×技師の重要性はよく分かる。小児患者、乳がんなど、つらい診断の中にどこか救われる後味がある。女性との距離感の良さは天性なのか、共演女優が魅力的に見える窪田マジック。監督が同じゆえ、演出も音楽もまんま「HERO」。恋バナでテンポが落ちる感あり。病院の廊下をランウェイみたいに歩く本田翼は最高。

テレビ東京ドラマBiz「スパイラル~町工場の奇跡~」
テレビ東京ドラマBiz「スパイラル~町工場の奇跡~」

◆「スパイラル-町工場の奇跡-」(テレビ東京、月曜10時)玉木宏/貫地谷しほり

★★★☆☆

大企業重役として敏腕をふるう企業再生人が、恩ある町工場に転身して倒産ピンチを救う。銀行と町工場という日曜劇場みたいなテーマだが、奇をてらわず人間ドラマを描き、汗と涙に共感できる。真山仁「ハゲタカ」シリーズのスピンオフ作品。柴田恭兵が演じた「芝野」が玉木宏で戻ってきて、襲いかかる巨大ファンド、かつての出世競争の遺恨などのテイストが懐かしい。敵側にもリアリティーがあるため、従業員5人の専務になってもベストな戦い方を選ぶ芝野の男ぶりがよく分かる。作りが手堅すぎるのと「ものづくりの魂」「人の役に立つ」の正論多めで面白みに欠けがち。先代の息子(戸塚純貴)の成長が描かれた2話は若々しい快作だった。

フジテレビドラマ「パーフェクトワールド」
フジテレビドラマ「パーフェクトワールド」

◆「パーフェクトワールド」(フジテレビ、火曜9時)松坂桃李/山本美月

★★★☆☆

車いすの29歳建築士と、元同級生のラブストーリー。脊椎損傷のデリケートな部分にも踏み込んだまじめな作風を、松坂桃李の格調がしっかり受け止める。必死に現実と折り合いをつけてきた好青年の10年間を思わせ、「立ち直ってはくれたけど、自分に厳しい子に変わってしまった」(麻生祐未)という人物描写を体現しているのはすごい。それだけに、車いすに対する今どきありえない偏見の数々や、今どき見ない段ボールに捨て犬、今どき誰もやらないプンプン顔など、古い演出とご都合主義がテンポを引っ張って残念。原作が持つ行間の力とは違う気がする。やはり2時間尺の映画向きだと思うので、この2人でも2時間バージョンで見てみたかった。

TBS火曜ドラマ「わたし、定時で帰ります。」
TBS火曜ドラマ「わたし、定時で帰ります。」

◆「わたし、定時で帰ります。」(TBS、火曜10時)吉高由里子/向井理

★★★☆☆

「残業ゼロ、定時で帰る」をモットーとするヒロインの働き方改革ドラマ。スカッとする話かと思ったら、氷河期世代と売り手市場世代の対立、ママ社員と独身社員の対立など、つらい対立がシビアに描かれる。古い縄張り感アピールするベテラン、すぐ辞める新人など、職場の延長見ているみたいで「共感」と「疲れる」で好みが分かれそう。余裕を失って孤立しそうな人を放っておけない主人公。話自体は想定内だが「あなたは何と戦っているんですか」の問い掛けはずしんときた。女性が輝く社会、一億総活躍。スローガンだけの現実を考えさせられる。丁寧な良作だが、もうちょっとポップな方が好みなので3。

日本テレビ水曜ドラマ「白衣の戦士!」(C)NTV
日本テレビ水曜ドラマ「白衣の戦士!」(C)NTV

◆「白衣の戦士!」(日本テレビ、水曜10時)中条あやみ、水川あさみ

★★★☆☆

おバカ新人と教育係の「ナースのお仕事」のフォーマット。話もキャラも散らかりすぎの1話に心が折れたが、患者さんの設定が魅力的になった2話以降、主人公の成長がきちんとあって楽しめる。財前直見の女優力が痛快な3話で、中条あやみと水川あさみのきずなが一気に動き、婚活のサイドストーリーも効いてきた。走る、ぶつかる、なぎ倒すのドタバタ劇と、うるさい顔芸も、慣れれば平気。「ちょっとチクっとしますよぉ」の変顔に爆笑した。泣きの場面やキラキラした一瞬を見れば、この人が大根でないのは分かる。作風は苦手だが、ごちゃごちゃ言わずに監督の要求通りやるタイプの若手は好感。

フジテレビ木曜劇場「ストロベリーナイト・サーガ」(C)フジテレビ
フジテレビ木曜劇場「ストロベリーナイト・サーガ」(C)フジテレビ

◆「ストロベリーナイト・サーガ」(フジテレビ、木曜10時)二階堂ふみ/亀梨和也/江口洋介

★★★★★

竹内結子の代表作を6年ぶりに二階堂ふみで再構成。まんま竹内版の作風で志が疑問だが、変な新解釈で変な感じにされるより、主演がちゃんとかっこいいからこれで全然いい。27歳で「姫川班」を率いる女警部補のカリスマ性と、封印した忌まわしいトラウマ。難しい人生を二階堂がタフに演じている。天敵の「勝俣班」を率いるガンテツ役の江口洋介が少々甘めだが、“班同士の手柄争い”というこの作品の見ごたえは手堅い。部下として姫川を寡黙に支える亀梨和也がジャニーズの気配を消し、つかず離れずの頼もしさも出てきた。原作の面白さは間違いないので、竹内版を見ていない人はぜひ。私も姫川班に入りたい。

TBS金曜ドラマ「インハンド」
TBS金曜ドラマ「インハンド」

◆「インハンド」(TBS、金曜10時)山下智久/浜田岳/菜々緒

★★★★★

義手の寄生虫学者、紐倉博士が、バイオテロや感染症パニックを解決に導く。ドSな天才科学者、人情派の助手、合理的に彼らを使う女性官僚。3人の個性が生き生きと物語を動かし、シャーガス病、スーパースプレッダーなどアカデミックなテーマが分厚い人間ドラマに。脚本が原作とキャラの魅力を正確に理解し、原作を分解してドラマ向きに再構築するのがうまい。不老不死研究の観月ありさを恩師設定にした3話は、紐倉らしいヒューマニズムの感動回だった。どんな結末であろうと「誰も無力ではない」。100年単位の視野で、必ずある答えを目指す理系の神髄にロジカルな山Pが合う。いろいろ作品と共演者に恵まれるのも彼の才能。

◆「俺のスカート、どこ行った?」(日本テレビ、土曜10時)古田新太/永瀬廉/道枝駿祐/長尾謙杜

★★★☆☆

ゲイで女装家、原田のぶお52歳の型破り教育。衣装負けしない古田新太の存在感は圧倒的。他者を尊重できない生徒の名前は呼ばない主義、「恋してやろうかこの野郎」の新任あいさつ、屋上の男子生徒に「飛べ」のエールなど、生き方フリーな人ならではの無勝手流な1話は新鮮だった。「チアダン」をパロッた2話も面白かったが、「辞めちゃった後悔は年をとってから膨らむ」など、普通にいい先生にシフトしてオリジナリティーが薄まった感。もっとスカート映えする豪快なクラス操縦を希望。反抗する男子グループの事情をもう見せてしまうのは今どき。

TBS日曜劇場「集団左遷!!」
TBS日曜劇場「集団左遷!!」

◆「集団左遷!!」(TBS、日曜9時)福山雅治/香川照之

★★☆☆☆

不採算支店を廃店させるため、支店長として送り込まれた男の災難と奮闘。支店長もつらいが、1人だけ顔芸とドタバタ芸をやらされている福山雅治もつらそうで、見ているこちらもつらい。緊迫の無線リレーと見せかけて、実は開店セレモニーのハト飛ばしでしたという古典ネタで1話が始まり、好みと違いすぎて話が全然頭に入ってこなかった。粛々と廃店させるという使命に反し、本能で頑張ってしまうジレンマという設定もややこしい。普通に、不採算支店の建て直しで良かったのでは。全体的にどう楽しんだらいいのか、まだコツがつかめない。

◆「あなたの番です」(日本テレビ、日曜10時半)原田知世/田中圭

★★☆☆☆

マンション内で突然幕開けた交換殺人ゲームと、巻き込まれた新婚夫婦。ご近所さんのイヤミスワールドを期待したが、個々の悪人ぶりも殺意の人間関係も分からないまま人だけが死に、サビに乏しい。廊下の向こうで金切り声、乾燥機の中に不気味なもの…。今のところ、観客を驚かすお化け屋敷手法で推移している。クレーマー、ストーカー、車庫入れ女など人物たちもギャグ漫画っぽい。2クールの挑戦は買いたいが、劇的効果を高めるにはだらだらやらない方がいい気がする。3話で田中圭の甘えん坊夫ぶりに意外な本性が見え始めてきたが、そもそも住民だけで30人以上いて、全然覚えられない。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

東京都生まれ。主に芸能面、社会面を担当し、主なスクープに小泉今日子結婚、広末涼子結婚など。やや辛口のコラムでやや知られ、テレビおたく、ドラマファンの立場から2010年より紙面等で「勝手にドラマ評」を展開。好きなドラマは「淋しいのはお前だけじゃない」、映画は「太陽を盗んだ男」。超方向オンチ。

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