テレビ東京の小孫茂社長
テレビ東京の小孫茂社長

テレビ東京小孫茂社長(68)が、昨年11月末の定例会見で「来年の抱負」について述べた言葉です。この時には想定できなかった社会情勢になっていますが、「真っ先にやる」という“テレ東スピリッツ”は新型コロナウイルス対策でも大いに発揮され、20日には、社員の出社割合を2割以下にするという目標を達成(17%)しました。

組織が一丸となるには強力なリーダーシップが必要ですが、定例会見や記者懇親会などでの小孫社長の無双キャラを見ていると、いろいろ納得なんですよね。

とにかく指示が明快で、やることがスピーディー。テレビ業界全体が放送収入の減少で“新しい稼ぎ方”を模索する中、昨春は「打ち出した番組の魅力が期待したほどではなかった」とストレートに反省し、部署の垣根を越えた企画を実現する「コンテンツ統括局」を新設。視聴率にカウントされない0~2歳を対象にした民放初の赤ちゃん番組「シナぷしゅ」や、深夜ドラマ「きのう何食べた?」など、配信で大いに稼ぐコンテンツを次々と打ち出し、結果を出しています。

視聴率以外の取り組みにも積極的に社長賞を出すので、社員側も「おもしろいことなら本当に何でもありなんだと、方針が分かりやすい」(30代プロデューサー)。ちょうど労使がひとつの方向を向いていたところで、「在宅8割」の目標にも一丸となりやすかったのだと思います。2月の段階で社長が「出演者、スタッフ、お客さまの安全」を打ち出し、それに応えた現場がどこよりも早く全番組での収録無観客化を実現させています。

いかなる場面でも自分の言葉で語る小孫社長の陽性な発信力も、「在宅8割」の前向きな実現に一役買っていると感じます。

会見などでも、官僚答弁は一切なし。「もはや言い訳も何もございません。数字は芳しくない」とか「夏までの何とも手掛かりがつかめない状況よりは、トンネルの先が見えてきた」とか、マイナス面もごまかさずに自分の言葉で語るので、「テレビ東京はまた面白くなると皆さんにお約束する」「この機を生かさなくては放送人として恥ずかしい」などの力強さに説得力があるのです。どんな質問にも嫌な顔をしないことから放送担当記者に一目も二目も置かれ、ぶっちゃけ人気があります。

ちなみに、歴代のテレ東社長と同様、おもしろトークで場を和ませるのも大好き。「私は『おそ松さん』世代ではなく『おそ松くん』世代」とボケながら新作を猛烈PRして笑わせたり、出川哲朗を激賞するあまり「言ってることは“やばいよやばいよ”だけのような気がするが、いろいろなやばいがあって」と脱線してヤフトピになったり。トップの気さくさが、組織の風通しにもつながっているようです。

在宅率8割の目標を掲げた3月の定例会見では「こういう時こそ新しい何かが出てくると期待している」「追い込まれると何か出るのがテレビ東京」「ピンチを大チャンスに変える心意気でやる」とも語っています。今後の手腕にも注目したいと思います。【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)