7月期の夏ドラマが出そろった。社会現象を起こした「VIVANT」の第2シーズン、「GTO」の28年ぶり新作といった大型復活もののほか、事件、医療、ラブストーリーなど多彩なオリジナルがそろう。「勝手にドラマ評」第67弾。今回も単なるドラマおたくの立場から勝手な好みであれこれ言い、★をつけてみた(主要枠のみ、シリーズものは除く)。

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月9ドラマ「ブラックトリック~裁きを操る弁護人~」(C)フジテレビ
月9ドラマ「ブラックトリック~裁きを操る弁護人~」(C)フジテレビ

◆「ブラックトリック~裁きを操る弁護人~」(フジテレビ系、月曜9時)GACKT、志田未来

★★★☆☆

ウソやでっちあげを武器に依頼人を救うダークヒーロー弁護士。月9の主演にGACKTという発想がすごく、ビジュアルも存在感もそのままGACKTの挑戦は個人的にツボ。1級建築士でもあるという設定にほとんど意味がなく、建築模型で組み上げた“ウソの設計図”もよく分からないが、これもGACKTワールドと思えば楽しめる不思議。1話ラストであっけなく業務停止処分となり、ライバル事務所から来た監視役、志田未来が代わりに法廷に立つ流れ。1話完結の勧善懲悪でテンポよく見られるだけに、クールな天才×やかましい正義感女子のバディがもう少し作用し合い、展開に意外性が出るとうれしい。

月10ドラマ「GTO」(C)フジテレビ
月10ドラマ「GTO」(C)フジテレビ

◆「GTO」(フジテレビ系、月曜10時)反町隆史/生見愛瑠/工藤阿須加

★★★☆☆

伝説の教師GTOが28年ぶりに復活。52歳になった鬼塚英吉も反町隆史もかっこよく、カワサキZ2、ポイズン、松嶋菜々子のオープニングに感動。フィクション上等の型破り路線かと思ったら、生徒に言いたいことも言えないポイズンな教育現場にちゃんと苦戦中。時代にアップデートしながら、教え子の部屋の壁を破壊したり、バイクに乗せて夕日に向かって走ったりのオニヅカ流もギリ残す。「物足りない」という声も多いが、鬼塚より、テレビにできることに制約がありそう。1話ずつ、意外な輝きを引き出された生徒が“呼んでほしいあだ名”で自己表現していく流れも青春でいい。「グレートティーチャーとは何か」。オニヅカが出す答えに期待。

連続ドラマ「クロスロード~救命救急の約束~」(C)テレビ朝日
連続ドラマ「クロスロード~救命救急の約束~」(C)テレビ朝日

◆「クロスロード~救命救急の約束~」(テレビ朝日系、火曜9時)今田美桜/磯村勇斗/寛一郎/泉澤祐希

★★★★☆

「ドクターX」と「TOKYO MER」のスタッフが集結した救急救命ドラマ。事件事故を発端に、医療(今田美桜)、救急隊(寛一郎)、警察(泉澤祐希)の三つどもえの群像劇はいかにも「TOKYO MER」。崩落事故、一刻を争う人捜しなど外ロケが多く、手術室と医局と廊下しか出てこない医療ドラマには出せない奥行き。勝手に病院飛び出したりカフェで勉強会したりのヒマさが気になるが、若者の成長と輝きがあるドラマは大好き。「正義感振りかざしてきます!」。青臭い元気印に今田美桜が嫌みなく、滑舌の良さもエマージェンシー向き。クールで視野が広い先輩救命医、磯村勇斗がいい仕上がり。

火9ドラマ「さよならノワール」(C)フジテレビ
火9ドラマ「さよならノワール」(C)フジテレビ

◆「さよならノワール」(フジテレビ系、火曜9時)小池栄子/北香那

★★★☆☆

「犯罪被害者支援室」を舞台にした、ベテラン警部補(小池栄子)とフレッシュな心理学者(北香那)のバディもの。ドラマとはいえ、被害者の心に踏み込む以上、最低限のデリカシーはあってほしいが、「対人コミュニケーションが苦手」ゆえ、被害者の心をこじ開けようと心理学トリビアで説教、という若者像にもやもや。とことん被害者に寄り添いながら、相棒による二次被害には甘いという先輩のダブスタも気になる。のびしろかスタンドプレーか、受け止め方で好みが分かれそう。全体の雰囲気はしっかりあり、多方面で評価も上々。楽しむコツがつかめそうな人はぜひ。

火曜ドラマ「君の好きは無敵」(C)TBS
火曜ドラマ「君の好きは無敵」(C)TBS

◆「君の好きは無敵」(TBS系、火曜10時)松本若菜/佐野勇斗

★★☆☆☆

どん底経営コンサル(松本若菜)とキャラクターデザイナー(佐野勇斗)が大ヒットキャラクター作りに挑む。カワイイ文化とのコラボというマーケティング先行ゆえ、人物像の解像度やストーリーが後回しな印象。変顔、コスプレ、反省ソングのドタバタした脱線ワールドが軸となり、松本若菜×佐野勇斗のラブコメ力、人間ドラマ力が発揮されず残念。コンサル業界、キャラクター業界自体はお仕事ドラマ向き。それぞれの「元エース」である2人のすごみがどこにあるのか、説得力、なるほど感がほしい。デザイン会社のセットやサンリオ取材協力のぬいぐるみなど「カワイイ」はあちこちにあり。

水曜ドラマ「ファーストクライ 母子救命救急室」(C)NTV
水曜ドラマ「ファーストクライ 母子救命救急室」(C)NTV

◆「ファーストクライ 母子救命救急班」(日本テレビ系、水曜10時)比嘉愛未/松島聡/真矢ミキ

★★☆☆☆

セレブ専門の産科病院という令和な切り口に期待したが、「ワケあり妊婦を無償で救う特命チーム」という古典だった。未受診妊婦、産み逃げといったテンプレは普通に“貧困と出産”テーマで問題提起すればよく、恵まれた金持ち妊婦さんたちがヒール役になっていて気の毒。どんな“問題妊婦”も赤ちゃんを抱くと母性に目覚めるハッピーエンドはおめでたく、男性不在で母親ばかり「ごめんね」と反省の涙を流す感動もなんか違う気がする。「歯を食いしばって偽善をやる」という鼻息ヒロインは上等なので、シュガーパウダー降り注ぐメルヘン演出より、産婦人科のドクターXで構えていてほしい。

水10ドラマ「Tokyo Middle 30」(C)フジテレビ
水10ドラマ「Tokyo Middle 30」(C)フジテレビ

◆「Tokyo Middle 30」(フジテレビ系、水曜10時)仲里依紗/のん/深川麻衣

★★★☆☆

あこがれの東京でリッチな専業主婦(仲里依紗)、独身アパレル店長(のん)、彼氏アリの教師(深川麻衣)となった高校時代の親友3人が、恋愛、キャリア、子育て、男女格差、仕事復帰といった“35歳の壁”を友情で乗り越えていく。多様なニーズに対応する3人ヒロインものだが、序盤は女性の生きづらさも、病気やダメンズといったオプションも思ったよりシリアスに描かれ、このじめじめ感はハードル高いかも。原作の中国ドラマのように、アパレル店長の恋と成長をメインにした方が勢いが出たのでは。タイトルに「Tokyo」を入れたダサさが悔やまれるが、最後はかっこいい3人に出会えそう。

木曜劇場「ラストノート」(C)フジテレビ
木曜劇場「ラストノート」(C)フジテレビ

◆「ラストノート」(フジテレビ系、木曜10時)内田有紀/寺西拓人

★★★★☆

「昼顔」「あなして」チームによる大人の恋愛。ねっとり系ではなくて見やすい。嗅覚(きゅうかく)障害で香水作りの夢をあきらめた49歳ヒロインと、身内の事情で詐欺師に転落した30歳の元画家。友人のお金を取り戻すという出会い作りが自然で、2人の専門分野である「花」を介したストーリー展開にオリジナリティーあり。内田有紀が美しくて「20歳差恋愛」に見えないが、この若者をどう立ち直らせるかという、オトナ女子向けの育成愛として楽しい。3話から寺西拓人の人生が動き出し、初めて見せた素の笑顔で物語のギアが上がる。坂井真紀がアクセル全開の「優子」にネットが騒然。そのうちやばいもの出してきそう。

金曜ドラマ「Tシャツが乾くまで」(C)TBS
金曜ドラマ「Tシャツが乾くまで」(C)TBS

◆「Tシャツが乾くまで」(TBS系、金曜10時)蒼井優/中島歩/高橋文哉/夏帆/松山ケンイチ

★★★★★

高速バスの転落事故。夫の遺体が発見されない蒼井優と、妻を失った中島歩。残された2人の禁断の何かかと思ったら、「あなたの夫、僕の妻と不倫してましたよ」の衝撃展開。人の見え方はひとつではないというイヤミス展開が極上で、コインランドリーを舞台にした「好きな人フィルターですっけ。掃除した方がいいっすよ」の爆回収にクギ付け。真相を知るには夫(松山ケンイチ)を探すしかなく、2人のねじれた助け合いと、新事実のねじれた転がりに毎週度肝を抜かれる。「silent」の生方美久氏がTBS初脚本。「テレビドラマの可能性を信じたい」という願いが生き生きと映像化され、金曜日が楽しみ。

土曜ドラマ「告白-25年目の秘密-」(C)NTV
土曜ドラマ「告白-25年目の秘密-」(C)NTV

◆「告白-25年目の秘密-」(日本テレビ系、土曜9時)松村北斗/岡崎紗絵

★★★☆☆

25年間、影から1人の女性を見続けてきた片思い男子のラブサスペンス。やっていることの数々はストーカーだと思うが、相手は何も知らず被害もない。執着という「狂気」でありながら、けなげな「純愛」にも見えるという境界線を松村北斗が絶妙なスレスレ感で表現し、ドン引きさせたり応援させたり、受け手の疑心暗鬼を揺さぶるのがうまい。沈黙を破り、急にヒロインと接点を持ち始めた背景に、25年前の殺人事件ありという流れ。幼少期の人助け以外、ヒロインの魅力がさっぱりだが、それも狂気の一方通行の境地で結果オーライに。純愛か、狂気の愛か、作品がどう決着をつけるか期待。

日曜劇場「VIVANT」(C)TBS
日曜劇場「VIVANT」(C)TBS

◆「VIVANT」(TBS系、日曜9時)堺雅人/阿部寛/二階堂ふみ/松坂桃李/二宮和也/役所広司

★★★★☆

商社マンにして自衛隊“別班”諜報(ちょうほう)員、乃木憂助の活躍再び。新たな冒険ではなく、前作(23年)の続きの「第11話」としてスタート。海外ロケによる大スケール映像、おなじみのキャラクターたち、展開に次ぐ展開を今回もわくわくと見た。1話はまたバルカ共和国に戻って採掘計画の続きと人捜し。絵的な変化のなさも感じたが、社会現象を巻き起こした前作は序章で、ここからが本論という2クールの挑戦に恐れ入る。前作は女性キャラが足を引っ張る危機演出が多く、祈るような気持ち。初回視聴率18・8%はテレビ業界全体を勇気づける。豪華さ、話題集めともに地上波ドラマの意地に敬意を表し、途中息切れしないよう健闘を祈ります。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)