歌舞伎俳優中村勘九郎(35)が2日、大阪松竹座公演「五月花形歌舞伎」の初日を迎え、父の故中村勘三郎さんの当たり役だった「怪談乳房榎(かいだんちぶさのえのき)」に臨み、本水を使っての大立ち回りを演じた。

 同演目は1人で3役を早替わりしながら、滝の決闘場面では、本物の水の中で、しぶきをあげながら大暴れした。大阪では91年、勘三郎さんが演じて以来、26年ぶりの上演。勘九郎は「意外に松竹座の水は冷たくて、ほんとに滝行しているような気分。でも、お客さまから熱い声援をいただくので、やっぱり、気分が違いますね」と、無事に開幕し、安堵(あんど)しながら語った。

 「五月花形-」は、市川猿之助(41)、弟の中村七之助(33)らとの共演。今回、猿之助のお株を奪っての早替わり挑戦で、勘九郎は「猿之助さんが今回、つなぎなんだから、僕はほんと、ぜいたくな思いさせてもらってますよ」と、充実した様子で話した。

 子供のころ、父の「-乳房榎」を見ると、必ず自宅の風呂場で、シャワーを滝に見立て、弟の七之助と立ち回りをしていたといい、いまや「うちの2人の息子も同じことをやってる」と苦笑しながら明かした。

 今回の「五月花形-」は昼夜とも、大仕掛けの演目がそろった。

 昼の部「金幣猿島郡(きんのざいさるしまだいり)」では、猿之助が宙乗りを披露。今公演中に「宙乗り1000回」を迎える猿之助は「1000回と一言で言っても、よくきたなと思う。高揚感があるからね、宙乗りは。でも、宙乗りがとけこむ作品を作っていかないと。ただ宙乗りになればいいわけではないから」と話していた。

 公演は26日まで。