作品賞「あゝ、荒野」で登壇した岸善幸監督(53)は、ハングリー精神に満ちたボクシング映画にふさわしい秘話を明かした。「実は(会場の)ホテルニューオータニで学生時代に皿洗いをしていたんです。バイトをしながら懸命に脚本を書いていた。だから、そのホテルで賞をいただいて、食事もいただいて…喜びもひとしおです」。

 表彰盾を贈った前年受賞者の瀬々敬久監督(57)が「何より挑戦的な作品だった」とたたえた「あゝ、荒野」は、前後編5時間5分の長尺。リアルなファイトシーンが話題になった。

 「菅田(将暉)君は半年がかりで体を作ってくれた。撮影中にはパンチが当たってしまうこともありました。ものすごく申し訳ないという思いがある一方で、すばらしい映像が撮れたという喜びもあった。本当に申し訳ないと思っています」と振り返った。

 花束を持って駆けつけた出演者のユースケ・サンタマリア(46)は「監督はなかなかカットをかけない人。カットがかかるまで自分で考えて演じなければならない。どうしても役に自分自身が混じってくる。そこがリアルで生々しいんだと思います」と独特な演出法を明かした。【相原斎】