映画製作会社の若松プロダクションが29日、都内で会見を開いた。同プロは前日28日、川崎市で開催中の「KAWASAKIしんゆり映画祭」(11月4日まで)が、旧日本軍の従軍慰安婦問題をテーマにしたドキュメンタリー映画「主戦場」(ミキ・デザキ監督)の上映を予定しながら見送ったことに抗議し、上映予定だった「止められるか、俺たちを」と「11・25自決の日~三島由紀夫と若者たち」の上映を取りやめたと発表していた。
「KAWASAKIしんゆり映画祭」は、「KAWASAKIアーツ」が主催するが、共催している川崎市が予算1300万円のうち、600万円を負担している。その川崎市が「主戦場」に出演した学者らが不当に出演させられたとして、上映差し止めなどを訴える訴訟を提起されていることを受けて「訴訟になっている作品を上映することで、市や映画祭も出演者から訴えられる可能性がある、市が関わる映画祭で上映するのは難しいのではないか」という「懸念」を示したことが、上映中止の事態を生んだ。
「止められるか、俺たちを」の白石和彌監督(44)は「主戦場」の上映見送りが
<1>「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」の展示中止と文化庁が決定した補助金不交付問題
<2>文化庁所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会」が、麻薬取締法違反で有罪判決を受けたピエール瀧が出演する「宮本から君へ」の助成金交付内定を「国が薬物を容認するようなメッセージを発信する恐れがある」との理由で取り消した問題の延長線上にあるとした。
その上で「文化を国がどう保護していくかという話。文化の、あらゆる可能性を守るのが国の仕事。映画自体が、作るのにお金がかかったり、いろいろな要素がある中で、売れる映画ばかり作ると文化は衰退する。国が助成金を守って多様な文化を守るのは重要。長い目で見れば国益を守ることになる」と訴えた。そして「現政権が考える国益で、国が助成金を出す、出さないを判断するのは、おかしいと思う」と強調した。
白石監督は、自身の作品「麻雀放浪記2020」が、ピエール瀧の出演で上映の是非が問われた中、配給元の東映がノーカット公開を英断し、予定通り公開された経緯がある。同監督は「自分たちのことを映画人だと言うが、25回も川崎で映画祭を続けた人も映画を愛しているに決まっている。映画祭の人も映画人」と映画祭事務局のスタッフを尊重した。
その上で「映画人は映画を守るべきだし、そこにプライドを持って欲しい。プライドが見えないから僕は怒っている。圧力を受けたか分からないけれど、戦っている姿勢が1ミリでも見えたら、僕らは戦う。貧しい予算の中でやっている映画祭もあるけれど、愛して上映してくれるなら、自腹を切っていく」と映画愛を訴えた。
「止められるか、俺たちを」の脚本を担当した井上淳一氏(54)は「映画祭は中間管理職。大問題は川崎市」と声を大にした。上映中止については「暴論であることを承知で…僕は、お客さんから見る機会を奪ってもいいと考える。1度、取り決めた上映を取り消す、表現の自由を損ねる映画祭に、行きたくないよと言うボイコットをしてもいいと思う。あえてこういう映画祭になった以上、お客さんもある意味、主体的な行動をしてもいいと思う」と観客へ自主性を訴えた。【村上幸将】



