歌手加山雄三(85)が年内でコンサート活動を終了することを19日、発表した。「歌えなくなってやめるのではなく、まだ歌えるうちにやめたい。最後までいつも通り歌う。それが一番なんだ」との思いから決断したという。

80歳を超えてからの加山は多くの試練に向き合ってきた。18年には愛船「光進丸」が焼失。19年にはトレーニング中に腰を圧迫骨折。それでもツアーは予定通り決行したが、ツアー途中で脳梗塞を発症した。20年には誤嚥(ごえん)からの脳内出血を発症。活動を休止してリハビリに励み、コンサートを開催できるまでに復活した。

だが、今年4月に85歳を迎え、今後の活動について家族やスタッフを交えて相談を重ねた。高齢となり、さまざまなことを続けていくことの大変さを痛感。そして「アーティストとして100%満足のいくコンサートをファンに提供し続けていけるのか」などと思い悩み、最終的に年内でコンサート活動から卒業することを決断したという。

ラストステージも合わせて発表した。コンサートは9月9日に東京国際フォーラムホールAで「加山雄三ラストショー~永遠の若大将~」として開催。12月には愛する海に浮かぶ豪華客船飛鳥2で船上ライブを行い、最後のコンサートとする。

加山は「みなさん、長きにわたる応援本当にありがとうございます。感謝しております」とファンへ感謝の思いを吐露。続けて「活動を始めて60年もの間、音楽を作り歌い続けてきました。そしてたくさんの人との出会いと、幸せをいただきました。年をとることでさまざまなことを続けていくことの大変さを実感しております。しかしながら、その時々で精いっぱい目の前のことに真摯(しんし)に向き合ってきました」と、61年に「夜の太陽」でデビューしてからの歌手活動や、ここ数年で相次いだ病気などを振り返った。

歌手デビューから62年目の大きな決断。芸能界は引退しないが、来年以降の歌手活動については現在、何も決まっていないという。「コンサート活動は年内をもってケジメをつけようと思いますが、これからも音楽は親友であり大切にしていきたいと思います。最後のライブ、みなさんで楽しみましょう!」とラストステージを楽しみにしている。

◆加山雄三(かやま・ゆうぞう)本名・池端直亮。1937年(昭12)4月11日、神奈川県生まれ。父は俳優上原謙、母は女優小桜葉子。慶大を卒業した60年に東宝入社。同年に映画「男対男」で俳優デビュー。61年に「夜の太陽」で歌手デビュー。同年から映画「若大将」シリーズで人気スターとなり、黒沢明や岡本喜八ら巨匠の作品にも多数出演した。歌手としてNHK紅白歌合戦に17回出場。14年に旭日小綬章、21年に文化功労者に選出された。