少し後悔したことがあった。8月1日、都内で行われたトークイベントでのことだった。イベントは、1975年(昭50)にTBS系列で放送開始の刑事ドラマ「Gメン’75」でメインキャストを務めた倉田保昭(80)、伊吹剛(76)、岡本富士太(79)、藤田三保子(73)が参加。それに先立っては、上映会も行われ、中高年男性を中心とした往年のファンがギッシリと詰め掛けていた。当時の撮影裏話、特に主演の故丹波哲郎さんのエピソードを明かすトークは、爆笑に次ぐ爆笑だった。

「後悔」は「Gメン’75」を見たことがなかったため、この会場の盛り上がりについていけなかったことだ。丹波さんが主役だったことは知っている。主要キャストが横一列に並んで歩く、有名なオープニング映像の存在も知っている。ただ、番組放送開始時点で、まだ生まれていなかった自分は、詳しく内容までは知らない。7年間も続いた番組で、幼少期とリアルタイムの放送が重なってはいたが、午後9時開始では寝ていた上に、かすかな記憶では「怖い番組」「大人の番組」というイメージ。それを引きずったまま、ずっと遠ざけていた気がする。

それでも大部分が60代後半以上と思われる観衆が、大声を出して子どものころに戻ったように笑っていた。なかなか見かけない光景だ。その姿に「Gメン’75」が持つ破壊力というか、爆発力、当時与えた影響力の大きさを、瞬時に理解した。

もちろん、純粋にトーク内容も面白かった。「ボス」役だった丹波さんの思い出話として、伊吹は「ボスには『伊吹、もうすぐ富士山が爆発する』と、そんな話をされました」と語った。死後の世界や霊界などの話で、多くのテレビ番組に出演した印象も故人には強いだけに、自分も含め、観衆の記憶を呼び起こし、笑いを呼んだ格好だった。

岡本は「丹波さんといえば、セリフを覚えてこないので有名。台本を読んでないことがハッキリしたこともありました。山城新伍さん(故人)がゲストの時、丹波さんが、いつものように『グッモーニン! グッモーニン!』って入ってきて、山城さんを見てビックリしてました。『新伍、お前なんでここにいるんだ?』って。新伍さんも新伍さんで『オッサン、どうせ台本読んでないから知らないだろうけど、1ページ目にオレの名前書いてあるだろ』って。丹波さんは『お前、出てるのか』、新伍さんは『出てちゃ悪いかよ。台本読んでから入ってこいよ』って」と、たまたま見ていた2人のやりとりを再現し、自らも大笑いしていた。

そんなトークイベントでのやりとりを記事にしたところ、非常に多くの人に読んでもらった。放送終了から44年、放送開始からでは51年も経過していても、作品を愛している人が大勢いる。だから半世紀近く経過しても、当時の面影を追ってイベントにも多数駆けつける。そんな作品に出合えたことは、イベントに参加した4人の俳優にとって“役者冥利(みょうり)に尽きる”という境地なのだろう。

ただ、倉田は言った。「Gメンというのは、丹波さんがいなかったらカッコつかないですよね。やっぱり大黒柱。丹波哲郎がいて、僕らがいる。役者がただ、そろっていればいい番組じゃない」。亡くなって20年が経過してもなお、丹波さんは後輩に慕われている。そして、そんなエピソードが尽きない、現代ではなかなか見かけない豪快な丹波さんだからこそ、いまさらながら、ひかれている自分に気付いた。イベントは全話Blu-ray BOX発売を記念して開催されたもの。ずっと遠ざけていた「Gメン’75」を、いまさら中のいまさらながら、見てみようかなと思っている。【高田文太】