中国は3日、月の裏側から土壌や岩の試料(サンプル)を持ち帰る世界初の計画を実行するため、無人月面探査機「嫦娥6号」を海南省文昌の発射場から打ち上げた。宇宙当局は打ち上げ成功を宣言した。中国国営メディアが伝えた。「宇宙強国」の建設を掲げる習近平指導部は月面での中国人による初の有人探査や基地建設も目指し、米主導の国際月探査「アルテミス計画」に対抗する。

嫦娥6号は運搬ロケット「長征5号遥8」で打ち上げられ、予定の軌道に入った。月の裏側の南極域に着陸し、ロボットアームやドリルを使って土壌などを採取し、容器に入れて地球に運ぶ。帰還機は内モンゴル自治区に着陸する予定。任務期間を53日間と設定した。

香港紙は6月6~8日ごろに月面着陸と試料採取が行われ、6月25日ごろに試料が地球に到着する見通しだと報じた。

月の裏側は地球から見ることができず、直接の通信もできないため、3月に打ち上げた衛星「鵲橋2号」を介して嫦娥6号とやりとりする。嫦娥6号はフランス、イタリア、パキスタン、欧州宇宙機関(ESA)の観測機器を搭載。月探査で国際協力を進める姿勢をアピールしている。

国営中央テレビは3日、打ち上げ前から発射場の中継映像を交えて報道。月面裏側の試料採取は「人類初の試み」として、中国の宇宙開発の進展を大々的に宣伝した。

嫦娥は中国の伝説で月に住む仙女の名。月探査計画「嫦娥プロジェクト」は2003年に公表された。無人探査機の嫦娥1号は07年、2号は10年に月周回軌道で月面の画像を撮影。3号は13年に中国初の月面着陸に成功した。4号は19年に世界で初めて月の裏側に着陸。5号は20年に月の表側の試料を地球に持ち帰った。

中国は30年までに中国人初の月面着陸を実現させ、35年までに月面で科学実験や資源開発の拠点となる研究ステーションを完成させる計画。(共同)