今月いっぱいでJRAの騎手免許を返上する小牧太騎手(56)が、華々しいフィナーレを飾った。
小倉12Rで単勝12番人気のモズアカボス(牡4、矢作)を勝利へ導いた。JRAでは1年9カ月ぶりの通算911勝目。レース後に開かれた騎手会主催の送別会では、胴上げで4度宙を舞った。来月からは古巣の兵庫所属として「第3の騎手人生」を送る。
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“フトシ”により外に持ち出されたモズアカボスはパワフルに加速を始めた。一完歩ごとに差を詰め、ラスト50メートルでかわす。JRAの騎手として最後の騎乗での勝利。検量室へ戻ってきたヒーローをスタンドのファンは「フトシ~」と大きな声援で迎えた。
JRAでは22年10月2日以来、約1年9カ月ぶりの勝利。インタビューでは「勝てるだけの馬に乗れば、勝てるということです」ときっぱりと言い放った。それだけ自信はあるが、騎乗馬が集まらずに長い間結果が出なかった。
「引退しようかと思っていた」と明かす。その思いが変化したのは、今年3月28日に園田で2勝した時だった。「ふと思いついた。園田ならば(多くの馬に)乗せてくれるんじゃないだろうかと」。園田ではネームバリューがある。地方通算3440勝。かの地の「帝王」と言っていい存在だった。そこから56歳の新たな挑戦が始まった。
今月19日、無事にNAR(地方競馬全国協会)騎手試験に合格。今月いっぱいでJRAの騎手免許を返上する。今週までJRAで騎乗できるが「もう乗らないつもり」。最終レース後に行われた送別会では同じ56歳で同学年の横山典騎手らから花束を受け取り、後輩たちの胴上げで4度宙を舞った。その間もかつて「泣き虫ジョッキー」と言われた“フトシ”に涙はなかった。「引退するわけじゃないからね。園田ではやっぱりフトシはすごいと思わせたい。それで強い馬をつくってJRA(の交流レース)に来たい」と闘志をたぎらせる。
騎手の中でも屈指の酒豪。今月1日からは一滴も口にせずにいたが、解禁だ。「昔からの友達が29人も小倉に駆けつけてくれた。今夜はみんなで飲むよ」。気持ちのいい小倉の夜に、酔いつぶれたのだろう。【岡本光男】
◆小牧太(こまき・ふとし)1967年(昭42)9月7日、鹿児島県生まれ。85年に兵庫競馬(園田・姫路)所属騎手としてデビュー。92年を最初に兵庫リーディングは10回。94、96年は地方競馬全国リーディングを獲得した。04年にJRA移籍。地方通算は現在3440勝。JRA通算は1万1741戦911勝。JRA重賞は34勝、うちG1は08年桜花賞(レジネッタ)、09年朝日杯FS(ローズキングダム)の2勝。長男・加矢太は22年からJRA障害騎手。
◆小牧太騎手と小倉競馬場 重賞は4勝。01年小倉記念(ロサード)、04年北九州記念(ダイタクバートラム)、07年小倉大賞典(アサカディフィート)、13年北九州記念(ツルマルレオン)を制している。

